【FIRE準備コラム】資産1億円からの「安心して取り崩す」戦略

FIRE準備

〜55歳からの切り崩し方針と現実的シミュレーション〜

FIRE(経済的自立と早期リタイア)を実現した後、最も重要になるのが「資産の取り崩し方」です。
せっかく築いた資産を長く安心して使うためには、単に貯金を減らすのではなく、計画的に、そして心理的にも安定して資金を使うことが求められます。

今回は、私が考える「55歳FIREからの資金取り崩し戦略」と「実際のシミュレーション」を紹介します。
数字だけでなく、FIRE後のメンタル面や生活設計にも触れながら、現実的で前向きなライフデザインを描いていきます。

FIRE後の年間支出の見積もり

まず出発点となるのが「支出の把握」です。
私の場合、現在の生活水準を維持しながらも、少し余裕を持たせて年間400万円と設定しました。

この金額には、食費や光熱費などの基本生活費に加え、趣味・旅行・交際費などのゆとり支出も含んでいます。
FIRE後は時間の自由が生まれるため、「お金を使う時間」も増える傾向があります。最初から少し多めに見積もっておくことが、心理的な安心につながります。

FIRE時点の資産構成と方針

55歳でFIREする時点での資産は 総額1億円(退職金1,700万円を含む) を想定しています。
その内訳は、株式が60%(6,000万円)、現金が40%(4,000万円)です。

運用に関しては、「株式の売却はできるだけ遅く」を基本方針としています。
これは、株式の長期リターンがインフレを上回る一方で、短期的には大きく変動するためです。
FIRE初期に株式を大きく売却してしまうと、将来の成長の果実を失ってしまう可能性があります。

取り崩し方の基本戦略(バッファー戦略)

私の基本方針は、「株式と現金を半分ずつ取り崩す」というシンプルな方法です。
毎年、資産の3%を取り崩し、その内訳を株式50%・現金50%とするイメージです。
株式の値動きが激しい年でも、現金の取り崩しで数年分の生活費をまかなえるようにしておく。
これが、いわゆる
「バッファー戦略」です。

特に株式市場が暴落したときは、現金の取り崩しだけで生活を維持し、株式は売らない。
市場が回復するまで「待てる」ことが、精神的な安定につながります。
暴落時に慌てて売ることが最大のリスクであり、それを避けるために現金比率を高めておくのです。

最重要フェーズは「55〜60歳」

私のFIRE計画のなかでも、最も重要な時期が55歳から60歳までの5年間です。
この期間はまだ年金もiDeCoの受け取りも始まらないため、完全に自己資金で乗り切る必要があります。

60歳以降は、

  • iDeCo(個人型確定拠出年金)から年50万円ずつ受け取れる
  • 65歳からは公的年金が年150万円入る

という安定収入が見込めるため、最初の5年間をどのように過ごすかがFIRE成功の鍵を握ります。
ここを「資産を減らさずに乗り切る」ことを目標に、現金を中心とした運用と配当収入の強化を進めていきます。

配当収入という「第3の柱」

FIRE後の生活で特に重視しているのが、インカム(配当収入)です。
今後、配当や分配金を月10〜15万円(年間120〜180万円)程度に育てることを目指しています。

配当収入があることで、「資産を減らさずに生活費を賄える」年が増えます。
また、相場が下落しても、配当は安定的に入ってくるため、心の支えにもなります。
これはFIRE後の精神的な安定に直結します。

シミュレーション結果(55歳〜70歳)

以下は、1億円を基点にした実際のシミュレーションです。
年利5%の運用、インフレ率2%、取り崩し率3%、配当金の増配率は年3%で試算しています。

年齢配当収入iDeCo年金取崩し額株式資産現金資産総資産
55歳150万300万6,142万3,850万9,992万
56歳154万299万6,292万3,700万9,992万
57歳159万299万6,449万3,550万9,999万
58歳163万299万6,614万3,400万1億14万
59歳168万300万6,787万3,250万1億37万
60歳173万50万301万6,968万3,099万1億68万
61歳179万50万302万7,158万2,948万1億107万
62歳184万50万303万7,357万2,796万1億154万
63歳190万50万304万7,565万2,644万1億209万
64歳195万50万306万7,782万2,491万1億274万
65歳201万50万150万308万8,010万2,337万1億347万
66歳207万50万150万310万8,247万2,182万1億429万
67歳213万50万150万312万8,495万2,025万1億521万
68歳220万50万150万315万8,754万1,867万1億622万
69歳226万50万150万318万9,025万1,708万1億733万
70歳233万0150万322万9,307万1,547万1億854万

この結果から見ても、資産はほとんど減るどころか微増傾向にあります。
株式を急いで売らず、インカムを育てつつ、現金で暴落をしのぐ戦略が機能していることがわかります。
つまり「取り崩しながらも資産を守る」ことが可能なのです。

FIRE生活の安心設計

このように数字を可視化してみると、「思っていたより不安が少ない」と感じる人も多いはずです。
FIRE後の資産は、使いながら育てるという発想が大切です。

また、医療費や介護費などの将来的な支出に備えて、現金の一部を「予備資金」として確保しておくのも現実的な対策です。
年間支出の1〜2年分(約600万円)を別口座に置いておけば、突発的な出費にも柔軟に対応できます。

まとめ 〜「減らす」ではなく「生かす」資産運用〜

FIRE後の生活で大切なのは、「資産を減らさないこと」ではなく、資産を活かして生きることです。
株式の成長力、現金の安定力、そして配当の安心感。この三つをバランスよく組み合わせることで、資産は単なる「お金」から「人生の土台」へと変わっていきます。

特に、55〜60歳の5年間をどのように過ごすかが成功の分かれ道。
この期間を落ち着いて乗り切ることができれば、60歳以降はiDeCoと年金という安定収入が加わり、FIRE生活がより盤石になります。

「焦らず、慌てず、資産を育てながら使う」——
それが、私の描く“持続可能なFIRE”のかたちです。

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