【FIRE準備】資産1億円からの「安心して取り崩す」戦略

FIRE準備

【2026年10月26日 訂正・再計算】以前のシミュレーションには、生活費と、取り崩し額・配当・年金などの収支を対応させていない点がありました。今回、取り崩し方と運用・配当の前提を見直し、iDeCoは開始時の1億円に含まれるものとして扱い直したうえで、試算の期間を85歳まで延ばしました。
以前の表にもとづく「資産はほとんど減るどころか微増傾向」「戦略が機能している」という説明は撤回し、本文を修正しています。新しい結果も、税金や社会保険料などを含まない、条件付きの試算です。

〜55歳からの切り崩し方針と現実的シミュレーション〜

FIRE(経済的自立と早期リタイア)を実現した後、最も重要になるのが「資産の取り崩し方」です。
せっかく築いた資産を長く安心して使うためには、単に貯金を減らすのではなく、計画的に、そして心理的にも安定して資金を使うことが求められます。

今回は、私が考える「55歳FIREからの資金取り崩し戦略」と「実際のシミュレーション」を紹介します。
数字だけでなく、FIRE後のメンタル面や生活設計にも触れながら、現実的で前向きなライフデザインを描いていきます。

FIRE後の年間支出の見積もり

まず出発点となるのが「支出の把握」です。
私の場合、現在の生活水準を維持しながらも、少し余裕を持たせて年間400万円と設定しました。

この金額には、食費や光熱費などの基本生活費に加え、趣味・旅行・交際費などのゆとり支出も含んでいます。
FIRE後は時間の自由が生まれるため、「お金を使う時間」も増える傾向があります。最初から少し多めに見積もっておくことが、心理的な安心につながります。

FIRE時点の資産構成と方針

55歳でFIREする時点での資産は 総額1億円(退職金1,700万円とiDeCoを含む) を想定しています。
その内訳は、株式が60%(6,000万円)、現金が40%(4,000万円)です。

運用に関しては、「株式の売却はできるだけ遅く」を基本方針としています。
これは、株式の長期リターンがインフレを上回る一方で、短期的には大きく変動するためです。
FIRE初期に株式を大きく売却してしまうと、将来の成長の果実を失ってしまう可能性があります。

取り崩し方の基本戦略(バッファー戦略)

私の基本方針は、「株式と現金を半分ずつ取り崩す」というシンプルな方法です。
毎年、生活費から配当などの収入を引いた不足分を、株式と現金から半分ずつ取り崩すイメージです。
株式の値動きが激しい年でも、現金の取り崩しで数年分の生活費をまかなえるようにしておく。
これが、いわゆる
「バッファー戦略」です。

特に株式市場が暴落したときは、現金の取り崩しだけで生活を維持し、株式は売らない。
市場が回復するまで「待てる」ことが、精神的な安定につながります。
暴落時に慌てて売ることが最大のリスクであり、それを避けるために現金比率を高めておくのです。

最重要フェーズは「55〜60歳」

私のFIRE計画のなかでも、最も重要な時期が55歳から60歳までの5年間です。
この期間はまだ年金が始まらず、iDeCoも60歳になるまでは受け取れないため、手元の株と現金、配当だけで乗り切る必要があります。

60歳以降は、

  • iDeCo(個人型確定拠出年金)を受け取れるようになる。ただし、iDeCoは1億円の一部です。受け取りはiDeCo口座から手元へのお金の移動で、それだけで総資産が増えるわけではない
  • 65歳からは公的年金が年150万円入る

という変化があります。資産の外から新しく入ってくる収入は、65歳からの年金です。
最初の5年間をどのように過ごすかが、FIRE成功の鍵を握ります。
ここを「株をなるべく売らずに乗り切る」ことを目標に、現金を中心とした運用と配当収入の強化を進めていきます。

配当収入という「第3の柱」

FIRE後の生活で特に重視しているのが、インカム(配当収入)です。
今後、配当や分配金を月10〜15万円(年間120〜180万円)程度に育てることを目指しています。

配当収入がある分だけ、資産から取り崩す額を減らせます。
相場が下落しても配当が入り続ければ、心の支えになり、FIRE後の精神的な安定にもつながります。
ただし、減配や無配になる可能性はあります。

シミュレーション結果(55歳〜85歳)

以下は、1億円を基点にした試算です。2026年10月に、計算をやり直しました。

旧表から数字が変わったのは、取り崩したお金と配当・年金などの合計が、生活費を上回った分の扱いを示していなかった点を直したからだけではありません。取り崩し方、株の値上がり率、配当の置き方、iDeCoの扱いも変えています。

取り崩しは「総資産の3%」から「生活費の不足分」へ、株の値上がりは年5%から年2.5%へ、配当は「150万円から毎年3%増」から「年初の株式評価額の2.5%」へ変えました。iDeCoは開始時の1億円に含まれているので、別の収入としては足していません。

株は毎年2.5%値上がりし、配当金は年初の株式評価額の2.5%を受け取るものとしました。値上がりと配当を合わせて年5%です。生活費は年400万円から始まり、毎年2%ずつ増えます。

暴落したときは、できるだけ株を売らずに現金で暮らす。これが私の方針です。

計算では、この方針を次のルールに置き換えました。毎年の初めに、生活費から配当と年金を引いた不足分を取り崩します。初年度は株と現金から半分ずつ出し、2年目からは、前の年に株価が下がっていたら現金を優先します。下がっていなければ半分ずつです。

年金は65歳から年150万円としました。記事を書いた当時の想定額で、額面か手取りかは区別していません。

なお、この試算では、iDeCoを含む資産全体をひとまとめに扱い、口座ごとの引き出しの制限や、運用で増えた分を生活費に回せる時期は区別していません。そのため、55〜59歳に実際に使えるお金が足りるかを確かめた計算ではありません。

年齢生活費配当収入年金取崩し額株式資産現金資産総資産
55歳40015002506,0223,8949,916
56歳40815102576,0403,7849,825
57歳41615102656,0563,6709,726
58歳42415102736,0673,5519,618
59歳43315202816,0753,4289,502
60歳44215202906,0783,2999,377
61歳45015202996,0773,1669,243
62歳45915203086,0713,0279,098
63歳46915203176,0612,8838,943
64歳47815203276,0452,7338,778
65歳4881511501866,1002,6538,753
66歳4971531501956,1532,5698,721
67歳5071541502036,2022,4798,682
68歳5171551502126,2492,3858,633
69歳5281561502226,2912,2858,577
70歳5381571502316,3302,1818,511
75歳5941611502836,4581,5728,030
80歳6561621503456,4488017,250
84歳※7101591504016,311496,360
単位は万円。年金あり・暴落なし。株は毎年2.5%値上がり、配当は年初の株式評価額の2.5%。資産は各年の取り崩しと運用のあとの年末の残高で、84歳の年末(※)が85歳到達時です。税金と社会保険料は含みません。各項目を万円単位で四捨五入しているため、内訳の合計や差額が一致しない場合があります

55歳の1億円は、60歳で約9,400万円、70歳で約8,500万円、85歳になった時点で約6,400万円になりました。

今回置いた前提では、総資産は徐々に減る結果になりました。

年金のない55〜59歳の5年間では、約500万円減りました。80〜84歳の5年間の減り方はもっと大きく、約1,100万円でした。

85歳時点の約6,400万円は、年2%の物価上昇で55歳時点のお金に直すと、約3,500万円です。現金は84歳の年末で約50万円まで減っています。

暴落が来た場合と、年金がない場合

FIRE直後に暴落が来た場合も計算しました。暴落は、3年続けて下がって合計55%減り、そのあと5年かけて、暴落がなかった場合と同じ株価の水準まで戻る形です。

あわせて、年金を入れない場合も並べました。

年金暴落60歳70歳85歳到達時
年金あり暴落なし9,377万8,511万6,360万
年金ありFIRE直後に暴落6,961万7,657万5,286万
年金なし暴落なし9,377万7,530万2,043万
年金なしFIRE直後に暴落6,961万6,677万698万
総資産(60歳・70歳は年末、85歳到達時は84歳の年末)。年金は65歳から年150万円。暴落は3年で合計55%下がり、その後5年で暴落がなかった場合と同じ株価の水準に戻る形

年金が入る前提では、FIRE直後に暴落が来ても、この計算では85歳になるまで生活費をまかなえました。85歳時点の資産は約5,300万円です。

年金を入れないと、暴落がなくても85歳時点で約2,000万円でした。FIRE直後に暴落すると、約700万円まで減りました。

今回並べた2つの条件では、暴落があるかどうかより、年金があるかどうかのほうが、85歳時点の資産の差が大きくなりました。暴落がない場合どうしで比べると、差は約4,300万円です。年金を年150万円とした想定での比較です。

前の年が下落なら現金を優先する、というルールの効果も見ました。年金ありの条件で、FIRE直後に暴落が来るケースについて、下がった翌年も株と現金から半分ずつ出すと、85歳時点の資産は約2,700万円でした。現金を優先するルールのままなら約5,300万円です。株が安いときに売る量が減ったぶん、差が出たと考えられます。

ただし、暴落と回復の8年間以外は毎年2.5%値上がりする、単純な試算です。税金や社会保険料も含めていません。FIRE直後の暴落について書いた記事とは、取り崩しのルール、株価の値上がり率と配当率、年金の扱いが違うので、数字はそのまま比べられません。

FIRE生活の安心設計

このように数字にしてみると、資産がどの時期に、どれくらいの速さで減るのかが見えてきます。
FIRE後の資産は、減り方を見ながら使うという発想が大切だと考えています。

また、医療費や介護費などの将来的な支出に備えて、現金の一部を「予備資金」として確保しておくのも現実的な対策です。
年間支出の1〜2年分(約600万円)を別口座に置いておけば、突発的な出費にも柔軟に対応できます。
なお、上の試算では、この予備資金を別に取っておく計算はしていません。

まとめ 〜「減らす」ではなく「生かす」資産運用〜

FIRE後の生活で大切なのは、「資産を減らさないこと」ではなく、資産を活かして生きることです。
株式の成長力、現金の安定力、そして配当の安心感。この三つをバランスよく組み合わせることで、資産は単なる「お金」から「人生の土台」へと変わっていきます。

特に、55〜60歳の5年間をどのように過ごすかが成功の分かれ道。
この期間を落ち着いて乗り切ることができれば、65歳からは年金が入り、今回の想定では取り崩す額が軽くなります。
ただ、生活費は年々上がっていくので、残高の減り方は見ていく必要があります。

「焦らず、慌てず、減り方を見ながら使う」。
それが、私の描く“持続可能なFIRE”のかたちです。

計算の前提

  • 55歳の時点で総資産1億円(退職金1,700万円とiDeCoを含む)とし、株式6,000万円・現金4,000万円から始めました。株6割・現金4割は開始時だけの配分で、比率を保つための売り買いはしていません。
  • iDeCoは1億円の一部として扱い、受け取りを別の収入としては足していません。60歳まで引き出せない点は、計算に入れていません。
  • 株は、暴落と回復の8年間以外は毎年2.5%値上がりするものとしました。配当を含まない値動きです。
  • 配当は、その年の初めの株式評価額の2.5%を受け取るものとしました。株を売れば、そのぶん配当も減ります。値上がりと配当を合わせて年5%です。実際の配当が株価と同じ割合で増減するという意味ではありません。
  • 現金には年0.5%の利息が、その年の取り崩しのあとの残高に年末につくものとしました。
  • 生活費は初年度400万円、以後は年2%ずつ増えるものとしました。
  • 公的年金は65歳から年150万円で、金額は毎年同じとしました。記事を書いた当時の想定額で、額面か手取りかは区別していません。「年金なし」は、これを入れずに計算したものです。
  • 毎年の初めに「生活費−配当−年金」の不足分を取り崩します。初年度は株と現金から半分ずつです。2年目からは、前の年に株価が下がっていたら現金を優先し、下がっていなければ半分ずつ出します。片方が足りなくなったら、残りはもう一方から出します。配当などが生活費を上回った年は、余った分を現金に加えます。
  • 暴落は、−25%・−25%・−20%の3年(合計−55%)と、そのあと年約22%(計算には丸める前の値を使用)で5年かけて、取り崩しをしない場合の株価の水準が、暴落がなかった場合と同じ水準まで戻る形にしました。8年間をならすと、暴落がない場合と同じ利回りになります。
  • 表の株式資産・現金資産・総資産は、その年の取り崩しと運用を終えた年末の残高です。「85歳到達時」は、55歳から84歳までの30回分の取り崩しと運用を終えた84歳の年末の残高です。
  • 「55歳時点のお金に直す」は、85歳到達時の総資産を、年2%の物価上昇の30年分で割り戻した値です。
  • 税金と社会保険料は含んでいません。
  • 取り崩し方による違いを見るために単純化した試算です。私のFIRE計画が85歳までもつかどうかを判定したものではありません。

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