25期連続で配当を増やしている会社の株を持っています。
それなのに、今の配当利回りは1.72%です。
高配当株のスクリーニングにかけたら、まず引っかかりません。私が買ったときは違いました。取得単価は1,243円で、簿価利回りは5.63%あります。
株価が3.3倍になって、高配当株ではなくなった。今回はそういう銘柄の話です。
基本データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 証券コード | 9436 |
| 企業名 | 沖縄セルラー電話株式会社 |
| 業種 | 情報・通信業(沖縄県内の携帯電話・通信サービス) |
| 株価 | 4,080円(2026年8月27日終値) |
| 時価総額 | 3,766億円 |
| 配当利回り(予想) | 1.72% |
| PER(会社予想) | 28.35倍 |
| PBR(実績) | 3.79倍 |
| EPS(予想) | 143.91円 |
| BPS(実績) | 1,076.62円 |
| 自己資本比率 | 82.2% |
| 決算期 | 3月 |
| 私の平均取得単価 | 1,243円(簿価利回り5.63%) |
株価・EPS・配当はすべて株式分割を調整した数字です。この会社は2022年10月と2025年10月に、それぞれ1株を2株に分けています。
どんな会社か 沖縄県内でauを売っている

KDDIが親会社です。沖縄県内でau、UQ mobile、povoを提供しています。
営業エリアは沖縄県だけ。全国展開はしていません。
| セグメント | 売上比率 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 電気通信事業 | 60.6% | au・UQ mobile・povoの通信料、FTTH(光回線) |
| 附帯事業 | 39.4% | 端末販売、auでんき、法人向けソリューション、自治体DX |
2026年3月期の実績で計算しています。会計上は単一セグメントなので、決算資料に載っている営業収益の内訳を使いました。
面白いのは、伸びているのが附帯事業のほうだということです。2020年3月期は電気通信481億円・附帯198億円でしたが、2026年3月期は電気通信522億円・附帯340億円。6年で附帯事業が1.7倍になりました。
通信料の値下げ圧力が続くなかで、端末販売や電気、法人向けのDX案件で穴を埋めてきた形です。
沖縄限定というと小さく聞こえますが、モバイルの総契約数は2026年6月末で70万契約を超えました。沖縄県の人口は約147万人ですから、県民のかなりの割合が使っている計算になります。
業績の推移 10年間ずっと増収

営業収益は2016年3月期の627億円から、2026年3月期は863億円。10年で1.38倍です。派手ではありません。
ただ、営業利益率が17.9%から21.7%まで上がっているのが効いています。売上の伸びは小さくても、利益はそれ以上に伸びる。
2022年3月期に一度だけ減収がありますが、翌期には戻しています。

ROEは長く11%台で横ばいでしたが、2024年3月期から一段上がって13%台に乗りました。
利益が増えたことに加えて、自社株買いで株数が減ったのが理由です。この話はあとで出てきます。
配当 25期連続増配という記録

2016年3月期の24円から、2027年3月期予想の70円まで。11年で2.92倍、その間ずっと減配なしです。
グラフに映っているのは11年分ですが、会社の記録はもっと長い。2027年3月期の70円が実現すれば25期連続増配になります。会社のサイトでは、2001年3月期の記念配当を除いて数えて「26期連続」としています。

EPSは69円から144円へ。配当性向は35.0%から48.6%まで、じわじわ上がってきました。
ここは見方が分かれるところだと思っています。利益の伸び以上に配当を増やしてきたから、性向が上がっている。逆にいえば、性向を上げる余地は前ほど残っていないということでもあります。
50%が近い。これ以上のペースで増配を続けるには、利益そのものを伸ばすしかありません。
株主還元方針 配当だけでなく、株数を減らしている
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| 配当の基本方針 | 財務の健全性を維持しつつ、安定配当を継続的に行う |
| 連続増配 | 2027年3月期予想で25期連続(会社の数え方では26期連続) |
| 配当性向 | 数値目標なし。2027年3月期予想で48.6% |
| 自社株買い(170万株・50億円が上限) | 2026年5月22日〜2027年4月16日。取得分は消却する予定 |
| 自己株式の消却 | 2026年5月15日に1,875,500株(約50億円)を消却済み |
配当性向の目標を出していない会社なので、方針としては物足りなく見えるかもしれません。
ただ、やっていることは徹底しています。
自社株買いは2021年3月期に20億円で始まり、2023年3月期からは毎年続いています。2024年3月期は113億円。しかも買った株を金庫にしまうのではなく、消却して消してしまう。
消却すると株数が永久に減ります。同じ利益なら1株あたりの利益が増えるし、同じ配当総額なら1株あたりの配当も増える。地味ですが、増配と同じ方向に効きます。
実際、発行済株式数は2026年3月末の9,417万株から、2026年6月末には9,230万株まで減りました。3か月で2%です。
株価の動向 10年で5.3倍

2016年秋の765円から、今は4,080円。10年で5.3倍です。
グラフを見ると、2016年から2020年までの4年間はほとんど横ばいでした。動き出したのは2020年の後半から。とくに2024年以降の上がり方が急です。
この間、業績は毎年少しずつしか伸びていません。営業収益は10年で1.38倍、EPSは2.1倍。株価の5.3倍は、業績の伸びよりずっと速い。
差の分だけ、株が高く評価されるようになったということです。
配当利回りの推移と、今の位置

2020年の3.26%をピークに、6年かけて1.72%まで下がりました。
過去10年の平均は2.82%です。今はその6割ほどしかありません。グラフのなかで、いちばん低い位置にいます。
配当は11年間ずっと増えているのに、利回りは下がり続けている。株価の上がり方が配当を追い越したからです。配当は11年で2.9倍、株価は10年で5.3倍。差が開けば、割り算の答えは小さくなります。
増配が止まったわけではありません。買う人にとっての条件が変わっただけです。
今の株価をどう見るか

ここははっきり書いておきます。
PER28.35倍は、2010年以降のレンジ(6.67〜27.47倍)の上限を超えています。PBR3.79倍も同じで、レンジの上限は3.29倍でした。
どちらも、この16年で見たことのない水準にいます。
同業と比べても差があります。NTTが13.9倍、KDDIが15.0倍、ソフトバンクが20.7倍。3社の平均が16.5倍ですから、沖縄セルラーはその1.7倍で買われている計算です。
安定して増配を続ける会社が評価される流れは分かります。自己資本比率82.2%という財務も、たしかに固い。
それでも、営業収益が年に数%しか伸びない会社にPER28倍というのは、私には説明がつきません。
直近の決算 第1四半期は営業利益25.6%増

2026年7月30日に、2027年3月期の第1四半期決算が発表されました。
| 項目 | 27/3期 1Q | 前年同期比 | 通期予想に対する進捗 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 220億円 | +6.8% | 24% |
| 営業利益 | 58億円 | +25.6% | 31% |
| 当期純利益 | 40億円 | +24.1% | 30% |
営業利益の進捗が31%。4分の1が過ぎた時点としては、前倒しで進んでいます。
中身を見ると、モバイルの通信料収入が926百万円のプラス、端末販売が548百万円のプラス。値上げではなく、料金プランの改定と契約数の積み上げで稼いでいます。
解約率は1.09%で、3四半期連続で前年を下回りました。auでんきの契約も4四半期連続で純増。
通期予想は据え置きです。上方修正は出ていません。
余談ですが、決算資料の1ページ目が熊本地震のお見舞いから始まっていました。7月28日に発生したものです。沖縄の会社が熊本に触れるところに、離島や災害と向き合ってきた会社なんだな、と思ったりしました。基地局に発電機を常設して、バックホール回線にStarlinkを使う、という話も資料に載っています。
私がこの株をどう見ているか
売るつもりはありません。
簿価利回りが5.63%あるからです。取得単価1,243円に対して、今の配当が70円。株価がいくらになろうと、私が受け取る利回りはこの数字で計算されます。
25期連続増配ということは、来年もこの数字は上がる可能性が高い。売ってしまえば、その積み上げが止まります。
ただし買い増しはしません。
今から1株買っても、利回りは1.72%です。私が目指しているのは配当で月20万円という設計なので、1.72%の株を積み増しても届きません。同じお金を利回り4%の銘柄に回したほうが、目的には近づきます。
持ち続けるが、増やさない。この銘柄はその位置に置いています。
もし利回りが3%まで戻るとしたら、株価は2,300円あたりです。今から4割以上下がる計算になるので、現実的な待ち方ではないと思っています。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 事業の安定性 | ◎ 沖縄県内で70万契約、解約率1.09% |
| 増配の実績 | ◎ 25期連続増配、11年で2.92倍 |
| 財務の健全性 | ◎ 自己資本比率82.2% |
| 株主還元の姿勢 | ○ 自社株買いを消却まで実行。配当性向の目標はなし |
| 収益性 | ○ 営業利益率21.7%、ROE13.4% |
| 成長の速さ | △ 営業収益は10年で1.38倍 |
| 今の配当利回り | × 1.72%。過去10年平均2.82%を大きく下回る |
| 今の株価水準 | × PER28.35倍・PBR3.79倍とも2010年以降の上限超え |
会社としては、文句のつけようがありません。
問題は値段です。
いい会社を安く買えたときのリターンが、この銘柄には出ています。同時に、いい会社でも高く買えば利回りは残らない、ということも同じグラフが示しています。
高配当株投資でいちばん効くのは、銘柄選びより買う値段なのかもしれません。1億円のロードマップを進めるうえで、そこは忘れないようにしたいところです。


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