【FIRE準備コラム】市場に勝とうとするのをやめた話。『敗者のゲーム』とインデックス投資

FIRE準備

みなさん、インデックス投資はやっていますか。このブログでは高配当株の話ばかり書いているので、意外に思われるかもしれませんが、私の資産の土台をつくってきたのはインデックス投資のほうです。2018年から毎月、同じ投資信託を積み立てているだけ。もう8年になります。

買うときに悩まない。上がっても下がっても放置。ニュースも見ない。正直、書くことが何もないんですよね。それなのに振り返ってみると、いちばん何もしていない部分が、いちばん増えていました。これはちょっと悔しい。

クレーコートに置かれたテニスラケットとボール
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なぜ「何もしない」が強いのか。その理由を、これ以上ないほど鮮やかに説明した本があります。チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』。1975年の論文がもとになっていて、半世紀たったいまも読み継がれている名著です。私の投資の考え方は、この本でだいぶ変わりました。

プロのテニスと、アマチュアのテニスは別の競技

この本の出発点は、なぜかテニスの話です。

プロのテニスは、鋭いショットでポイントを取りにいく競技。勝つのは、決め球を打てた人です。ところがアマチュアのテニスはまるで違う。ラリーはたいてい、ネットにかける、ラインを割る、空振りする、といった自分のミスで終わります

クレーコートに転がるテニスボール
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つまりアマチュアの試合は、点を取った人ではなくミスの少なかった人が勝つ。エリスはこれを「敗者のゲーム」と呼びました。そして、現代の投資もまた敗者のゲームになった、と話は続きます。ここからが面白いところです。

理由は市場の中身が変わったからです。かつて市場の主役は個人でしたが、いまや売買の大半は、優秀な人材と最新の情報を持つプロ同士。その人たちが競い合って付けた価格を、さらに出し抜くのは容易ではありません。無理に勝とうとして打った鋭いショットが、そのまま自分のミスになる。

だから個人にとっての正解は、派手なショットを狙うことではなく、ミスを減らすこと。市場に勝とうとするのをやめて、市場そのものを持つ。それがインデックス投資です。

データが示す、身も蓋もない現実

インデックスに負けたアクティブファンドの割合(10年)

S&P社が毎年公表している「SPIVA」という調査があります。プロが運用する投資信託が、指数に勝てたかどうかを追跡したものです。最新版(2025年末)の10年成績を見ると、こうなります。

日本大型株で83.4%のファンドが指数に負け、米国株式では97.7%。そしてグローバル株式と新興国株式にいたっては、10年で勝てたファンドがゼロでした。

運用のプロが、専用の情報網と分析チームを抱えて、それでもこの結果ですからね。私のような週末の素人が、仕事の合間に銘柄を選んで勝てると思うほうが、どうかしています。この数字を最初に見たときは、素直にへこみました。

エリスの言うとおり、これは能力の問題ではありません。ゲームの構造の問題です。

『敗者のゲーム』から、私が実際に守っている3つ

① コストは、確実に効く唯一の要素

将来のリターンは誰にも分かりませんが、手数料だけは今この瞬間に確定しています。この本がくり返し強調するのがコストの重みです。

年1.5%の信託報酬と年0.1%の差は、1年で見ればたった1.4%です。ただ、これが30年ぶん複利で積み上がると、最後の金額はぞっとするほど変わります。だから私が積立に選んだのは、指数連動で信託報酬が最安クラスのファンド。リターンは選べませんが、コストは自分で選べますからね。

② タイミングを計らない

「高いから今は待つ」「暴落してから買う」。私も何度も考えました。でもこの本は、市場のタイミングを当て続けられた人はほとんどいないと切り捨てます。上昇のかなりの部分は、ごく限られた日数に集中して起きるからです。その日に市場から降りていたら、平均リターンにも届きません。

エリスは、この限られた日を「稲妻が輝く瞬間」と表現しました。相場が跳ね上がるその一瞬に立ち会えるかどうかで、長期の成績は大きく変わる。そして厄介なことに、稲妻がいつ光るかは、誰にも分かりません。暴落のまっただ中だったり、悪いニュースが続いた翌日だったりします。

だとすれば、打てる手はひとつだけです。光る日がいつ来てもいいように、ずっとその場に立っていること。売ったり買ったりして席を外している人は、稲妻が光った日にかぎって、そこにいません。

だから積立日は決めたら動かしません。暴落対策の記事に書いたとおり、下がった月ほど淡々と買うだけです。相場を予想しないと決めた瞬間、投資はずいぶん静かなものになりました。退屈ですが、この退屈さがたぶん正解なんでしょう。

③ 方針を決めて、書いておく

もうひとつ、この本が個人投資家に強く勧めているのが、自分の投資方針を先に決めて文字にしておくことです。理由は単純で、相場が荒れているときの判断ほど当てにならないからです。

私にとってそれが、1億円へのロードマップと毎月の資産公開です。方針を公開してしまえば、怖くなった夜に勝手な売買はしにくくなる。市場から身を守るためではなく、自分から身を守るための仕組みです。

それでも私が高配当株を持つ理由

朝もやの山と湖
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とはいえ、ここまで書いておきながら、私の資産の内訳は投資信託が1,699万円で、高配当株が3,345万円。むしろ高配当株のほうが多いんですよね。言っていることとやっていることが違うじゃないか、と思われそうですが、これには理由があります。

この2つは、目的が違うからです。

インデックス投資高配当株投資
目的資産を最大化する毎月の現金をつくる
取り出し方売る必要がある持ったまま配当が届く
手間ほぼゼロ銘柄選びと管理が必要
私の役割FIRE後の土台FIRE後の生活費

効率だけを考えるなら、インデックス1本のほうが理にかなっています。それでも高配当株を積み上げているのは、身もふたもない話ですが、私が「売る」のが苦手だからです。

お金を使えない病の記事で書いたとおり、私は資産を取り崩すことに強い抵抗があります。インデックスは売らないと1円も使えません。その点、配当は勝手に振り込まれる。売る判断をしなくていいという一点が、私の性格には合っていました。

言い換えると、高配当株は「使えない病」への処方箋として持っています。配当で月20万円という設計図は、そのための計画です。

もし投資を始めたばかりの自分に、1つだけ言えるなら

「オルカンを積み立てて、あとは忘れなさい」。もうこれに尽きます。

銘柄を調べる時間も、決算を読む楽しさも、私は好きです。この趣味はやめる気がありません。ただ毎月の資産公開で数字を追ってきて分かったのは、私の資産を静かに押し上げてきたのは、いちばん退屈な部分だったということでした。まあ、認めるしかないですね。

『敗者のゲーム』は、投資を「勝つゲーム」から「負けないゲーム」に描き替えてくれる本です。ミスを減らす。コストを下げる。動かない。この3つだけで、プロの9割に勝ててしまう。そんな不思議な競技に、私たちは参加しています

派手さはありません。でも55歳でFIREするために必要なのは、たぶん派手さではないはずです。次に稲妻が光る日がいつなのかは分かりませんが、そのときちゃんとその場に立っていられるように。今月も、いつもの日に、いつもの金額を積み立てます。

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