基本給が、1年で数千円しか上がらない。
それを知ったとき、私は愕然としました。今までの働きは何だったのか、と思いました。

「失われた30年」という言葉には、決まった始まりと終わりがないようです。財務省の「平成財政史」では、1991年2月に景気がピークを迎え、その後、長引く景気低迷に入ったと説明されています。
この記事では、バブル崩壊後の1990年代から長く続いた経済の停滞を指す言葉として使います。給与・物価・株価は、それぞれ集計した期間を書いておきます。
前半は暮らし、後半は投資の話です。
平均給与は、長く伸び悩んだ
国税庁の「民間給与実態統計調査」で、1年を通じて勤めた人の平均給与(額面)を見ました。
| 年分 | 平均給与 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 1997年 | 467.3万円 | 当時のピーク |
| 2009年 | 405.9万円 | 1997〜2025年で最低 |
| 2024年 | 477.5万円 | 1997年を初めて上回る |
| 2025年 | 486.6万円 | 過去最高 |
1997年の467.3万円を上回ったのは、2024年分でした。27年かかっています。
2025年分は486.6万円で、前の年より1.9%増えました。ここ数年、額面の給与ははっきり増えています。1997年と比べると4.1%増です。
物価を考えに入れると、見え方が変わります。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の実質賃金指数(現金給与総額、事業所規模5人以上、2020年=100)は、1990年以降では1996年の116.5がいちばん高く、2025年は98.0でした。公表された指数を単純に比べると、2025年は1996年より16%ほど低い水準です。ただし、長い期間の比較には、働く人の構成や推計方法の変化も含まれます。
2つの統計は、調べ方も対象も違います。同じ物差しとして並べることはできません。それでも、額面の平均給与はようやく30年前を超え、物価で割り戻した賃金はまだ30年前に届いていない。2つを順に見ると、そういう姿が浮かびます。
物価は上がりにくく、低い金利が長く続いた
給与が伸び悩んだあいだ、物価も上がりにくい状態が続きました。
消費者物価指数(2020年基準、生鮮食品を除く総合)は、1998年から2012年までの15年のうち、10年で前の年を下回っています。
日銀は1999年にゼロ金利政策を始め、2001年には量的緩和に進みました。2016年2月からはマイナス金利も加わり、2024年3月に解除されるまで続きました。
預金の利息も、ほとんどつかなくなりました。日銀が集計している普通預金の店頭表示金利(平均)は、2016年10月から2024年2月まで、おおむね0.001〜0.002%という低い水準でした。
年0.001%なら、100万円を1年預けて、利息は税引前で10円です。
物価が上がらない世界しか知らなかったことは、以前「1億円は20年後に6,730万円分」の記事に書きました。今は物価も金利も動き出していて、その話は「金利のある世界」の記事で取り上げています。
低い金利は、景気の弱さへの対応でもありました。どちらが原因でどちらが結果なのか、私には決めきれません。
私が安定を求めて公務員を選んだ理由
私が就職した頃は、厳しい雰囲気でした。公務員は人気があり、安定を求める空気があった。当時の私は、そう感じていました。
私が公務員を選んだ理由は、安定です。
そして、基本給が1年で数千円しか上がらないことを知りました。冒頭に書いたとおり、愕然としました。
ただ、この数千円を、前の節の平均給与と結びつけるつもりはありません。国税庁の数字は民間の給与所得者の平均で、公務員は入っていませんし、同じ人を30年追いかけた数字でもないからです。
統計上の平均給与と、私自身の基本給の上がり幅は、別のものです。
日経平均が、1989年の高値を超えるまで34年かかった

日経平均株価は、1989年12月29日に38,915.87円をつけました。
そこから下がり、2009年3月10日には7,054.98円。高値から8割以上下がっています。
1989年の高値を終値で初めて上回ったのは、2024年2月22日の39,098.68円でした。34年あまりかかっています。
その後の動きは急で、2024年3月4日に4万円台、2025年10月27日に5万円台に乗りました。2026年6月25日には、終値で過去最高の72,366.34円をつけました。その後は下がり、2026年11月6日は1日で5.96%下がって、終値は57,434.77円でした。この最高値から2割あまり低い水準です。
ただし、日経平均は配当を含まない株価の指数です。配当を受け取り、それを再投資していれば、成績はこの線より上にきます。いつ買ったか、まとめて買ったか少しずつ買ったかでも、結果は変わります。
だから「日本株を持った人は、34年間ずっと損をしていた」という話ではありません。
それでも、1つの国を代表する株価指数が、高値を取り戻すまでに30年以上かかった例があります。
私が積み立てるS&P500と、1つの国への集中

私が積み立てているのは、S&P500のインデックスファンドです。
S&P500への投資は、国という単位で見ると米国に集中します。米国の株価も、長い間伸び悩む可能性がないとは言い切れません。
複数の国に分けて投資する指数には、例えばMSCI ACWIがあります。日本を含む先進国と新興国の株式で構成され、組み入れ比率は主に時価総額に応じて決まります。
日本・米国・全世界の株の成績を比べるには、期間や配当、通貨の条件をそろえる必要があります。この記事では、そこまでの比較は扱いません。
市場に勝とうとしない考え方は、『敗者のゲーム』の記事に書きました。
株主優待への興味から始まった投資と、今の考え
株に興味を持ったきっかけは、父がやっていた株主優待でした。
インデックス投資を始めたのは2018年、高配当株は2020年からです。
株は今、S&P500の積み立てと、高配当株の2本立てです。
まとめ
国税庁の平均給与は、1997年の467.3万円を2024年分で初めて上回り、2025年分は486.6万円でした。一方で、厚生労働省の実質賃金指数は、1996年の116.5から2025年の98.0まで下がっています。
物価は上がりにくく、普通預金の金利はおおむね0.001〜0.002%という低い水準が長く続きました。
日経平均は、1989年末の高値を超えるまでに34年あまりかかりました。配当を含まない株価の指数での話です。
私は安定を求めて公務員を選び、基本給が1年で数千円しか上がらないことに愕然としました。
民間の平均給与も日経平均も、過去の水準を上回るまでに長い時間がかかりました。今は、現金と株を基本に、資産の持ち方をできるだけシンプルにしたいと考えています。
出典
- 国税庁「民間給与実態統計調査」長期時系列データ
- 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査結果について」
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年分結果確報」参考資料(実質賃金指数)
- 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年平均」第3-2表
- 日本銀行「(参考)1990年代後半以降の非伝統的金融政策」
- 日本銀行「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入(2016年1月29日)
- 日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」(2024年3月19日)
- 日本銀行「当面の金融政策運営について」(2026年9月18日)
- 日本銀行 時系列統計データ「預金種類別店頭表示金利の平均年利率」
- 財務省 財務総合政策研究所「平成財政史」(バブル崩壊の時期)
- 日経平均株価(©日本経済新聞社)。FRED(セントルイス連銀)NIKKEI225 で取得
- Yahoo!ファイナンス「日経平均株価」(2026年10月29日以降の終値)
※平均給与は額面(税金や社会保険料を引く前)です。実質賃金指数は、従業員5人以上の事業所の現金給与総額を、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で割ったものです。日経平均は配当を含まない株価の指数で、著作権は日本経済新聞社に帰属します。普通預金の店頭表示金利は、2022年4月分から週次が月次になり、調査対象も変わりました。日経平均は2026年11月6日の終値まで、そのほかの数字は2026年10月29日時点で確認しました。


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