配当を半分にされた株を、私は持っています。
コマツ(証券コード:6301)。ブルドーザーや油圧ショベルをつくる、建設機械の国内最大手です。
2019年3月期の配当は110円でした。それが2021年3月期には55円。ちょうど半分です。
私の保有株のなかで、これほどはっきり減らされた銘柄はほかにありません。
その配当が、今は190円になっています。
平均取得単価は2,936円なので、私の簿価利回りは6.47%。株価は7,538円まで上がって、約2.6倍になりました。
今買う人の利回りは2.52%です。
減らされた株を、それでも持ち続けた結果がこれ、という話を書きます。

基本データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 証券コード | 6301 |
| 企業名 | 株式会社小松製作所 |
| 業種 | 機械(建設機械・産業機械) |
| 株価 | 7,538円 |
| 時価総額 | 約7兆129億円 |
| 配当利回り(予想) | 2.52%(190円) |
| PER(会社予想) | 19.28倍 |
| PBR(実績) | 1.91倍 |
| EPS(予想) | 390.87円 |
| BPS(実績) | 3,943.23円 |
| 自己資本比率 | 51.8% |
| 決算期 | 3月 |
| 私の平均取得単価 | 2,936円(簿価利回り6.47%) |
どんな会社か 売上の9割が建設機械
コマツと聞いて浮かぶのは、あの黄色い機械ですよね。
油圧ショベル、ブルドーザー、ホイールローダー。街の工事現場でも見かけますし、海外の鉱山で動いている巨大なダンプトラックもこの会社の製品です。

事業は3つに分かれています。
| セグメント | 売上比率 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 建設機械・車両 | 92% | 油圧ショベル、ブルドーザー、鉱山向けの大型機械 |
| 産業機械他 | 6% | 自動車工場向けの大型プレス、半導体向けエキシマレーザー |
| リテールファイナンス | 3% | 建機を買う顧客への割賦・リース |
※2026年3月期。セグメント間の取引を消去する前の数字なので、合計は100%を超えます。
表を作ってみて、思ったより偏っているなと感じました。
建設機械・車両が92%。実質、この一本で成り立っている会社です。
残りの2つは小さく見えますが、脇役として悪くない働きをしています。2026年3月期のセグメント利益を見ると、本業の建設機械・車両が18.0%減ったのに対して、リテールファイナンスは24.4%増、産業機械他は38.5%増でした。
本体が落ちた年に、脇が伸びている。
ちなみに産業機械他に入っている「エキシマレーザー」は、半導体の回路を焼き付ける装置に使う光源です。建機の会社がなぜ半導体を、と最初は思いました。2026年3月期は、このエキシマレーザー関連の保守売上と、自動車工場向け大型プレスの販売が伸びて、部門全体を押し上げています。
配当の推移 2021年、半分になった

見ていただきたいのは、真ん中のへこみです。
2019年3月期110円、2020年3月期94円、2021年3月期55円。2年で半分になりました。
中身を見ると、もう少しきつい話になります。
2021年3月期の期末配当37円には、創立100周年の記念配当10円が含まれていました。それを除いた普通配当は45円。110円からだと、6割減です。
100周年のお祝いをしながら、配当は6割減らす。
コロナで世界中の工事が止まった年でした。営業利益率も14.6%から7.64%まで落ちています。会社としては、記念配当を出すのが精一杯だったのだと思います。
ただ、そこからの戻りは早かったです。
96円、139円、167円、190円。5年で3.5倍になりました。2026年3月期も190円で据え置きです。
株主還元方針 「40%以上」とだけ書いてある
会社が掲げている方針は、拍子抜けするほど短いです。
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| 連結配当性向 40%以上 | 利益に応じて配当を出す。下限となる金額の約束はない |
| 自社株買い 上限1,000億円(2026年4月28日決議) | 上限2,500万株。発行済株式(自己株式を除く)の2.8%にあたる。取得期間は2026年4月30日〜9月30日 |
| 取得した株の全数を消却 | 買い戻した株はすべて消却する。消却予定日は2026年10月30日 |
まず押さえておきたいのは、累進配当ではないということです。
三井物産や三菱HCキャピタルのように「減らさない」と言っている会社とは、ここが決定的に違います。
利益が減れば、配当も減る。2021年3月期は、方針どおりに減っただけの話です。
文句を言う筋合いはありません。会社は最初からそう書いていたのですから。
一方で、自社株買いのほうは評価しています。
1,000億円を上限に買い戻して、買った株は全数を消却する。金庫に置いたままにせず、消してしまう。
稲畑産業の記事でも書きましたが、消却まで踏み込む会社はまだ多くありません。株数が永久に減るので、1株あたりの利益も配当も自動的に押し上がります。
消却の予定日は2026年10月30日。もう日付まで決まっています。
買い戻しを進めている分、自己資本比率は3月末の54.7%から6月末には51.8%へ下がりました。手元の資本を株主に返しているので、これは想定どおりの動きです。
業績の推移 10年間、赤字がない

売上高は1.8兆円から4.3兆円(今期予想)へ。10年で2.4倍です。
ただ、まっすぐ伸びたわけではありません。
2020年3月期と2021年3月期は、2年続けて売上が落ちています。営業利益率も14.6%から7.64%へ半減しました。建設機械は、景気が落ちればまっさきに止まる商売です。

ROEも5.56%から14.13%まで振れています。
それでも、この10年で赤字の年はひとつもありません。いちばん悪かった2021年3月期でも、営業利益率7.64%・ROE5.56%は確保しています。
赤字の年でも配当を出したINPEXのような会社を持っていると、この「赤字が一度もない」という点はけっこう効いてきます。同じ景気敏感でも、崩れ方が穏やかなんですよね。
EPSと配当性向 40%をなぞってきた会社が、48.6%を出した

下のグラフに、この会社の性格が出ています。
2022年3月期から2025年3月期までの配当性向は、40.3%、40.3%、40.1%、40.1%。
方針の「40%以上」を、ほぼぴったりでなぞっています。余計には出さないし、足りなくもしない。生真面目というか、そういう会社なのだろうと思います。
その会社が、2026年3月期に45.9%を出しました。
利益が減ったのに配当を190円のまま据え置いたので、割合のほうが押し上がった形です。
さらに2027年3月期の予想は48.6%。今期も減益の見通しなのですが、配当は190円で変えないと会社が明言しています。
2021年3月期は、同じ状況で減らしました。今回は据え置いた。
ここが、私がいまいちばん見ているところです。
株価の動向 2,936円が7,538円になった

この10年の値動きです。
2016年から2022年ごろまで、株価は2,000円台から3,000円台を行ったり来たりしていました。
7年近く、ほとんど上がっていません。
動いたのは2023年からです。2026年2月に7,533円をつけたあと6,000円台まで戻し、8月にまた高値圏へ来ています。年初来安値が5,062円ですから、今年だけで5割近く動いたことになります。
持っているあいだの大半は、退屈な株でした。
配当利回りの推移と、今の位置

現在の利回りは2.52%です。
過去9年の平均は3.25%なので、平均をはっきり下回っています。高配当株を探している人の画面には、今のコマツはもう出てこないはずです。
2019年末は4.16%ありました。配当110円で、株価2,642円だった年です。
その翌期に、その110円が55円になったわけですが。
利回りが高く見える時期は、たいてい業績が怪しい時期でもあるということですね。数字だけ見て飛びつくと、こういう目に遭います。
直近の決算 増収増益だが、通期は減益予想
2026年7月29日に、2027年3月期の第1四半期決算が発表されました。
売上高1兆431億円(前年同期比14.69%増)。当期純利益961億円(同5.44%増)。増収増益です。
ただ、通期の予想は明るくありません。
売上4兆3,020億円に対して、当社株主に帰属する当期純利益は3,490億円。前期の3,764億円から減益の見通しです。
その前期も減益でした。営業利益13.7%減、当期純利益14.4%減。
2年続けて利益が落ちる想定で、それでも配当は190円を維持する。会社の姿勢としては、2021年のときより明らかに踏ん張っています。
私がこの株を持ち続ける理由
簿価利回りが6.4%あるから
2,936円で買って、今190円を受け取っています。6.47%です。
この数字を手放す理由が、どう考えても見つかりません。
一度減らされた経験があるから
変な理由に聞こえるかもしれません。
でも私は、この会社が減配する会社だとすでに知っています。2021年に半分にされているので、期待の上限が最初から低いんです。
むしろ怖いのは、「減らさない」と言っている会社を持っているときのほうかもしれません。約束が破られたときの落差が大きいからです。
コマツには、その約束がありません。だから、減っても驚かずに済みます。
10年間、赤字を出していないから
配当が減った年はありますが、会社が赤字になった年はありません。
利益さえ出ていれば、その40%は配られます。ゼロにはならない。高配当株に求めているのは、だいたいそのくらいの安心感です。
リスクと注意点

気になるところも書いておきます。
ひとつは、建設機械・車両に92%が乗っていること。
脇の2つが支えたと書きましたが、規模でいえば合わせても1割に届きません。建機が止まれば、会社も止まります。世界のどこかで工事や鉱山開発が減れば、それがそのまま数字に出る構造です。
もうひとつは、株価の水準です。
PERは19.28倍。同業の日立建機が14.13倍、クボタが10.77倍ですから、同じ業種のなかでは高いほうに位置しています。
コマツ自身の過去のレンジは7倍台から62倍台までと幅が広いので、19.28倍が高すぎるとまでは言い切れません。それでも、割安と呼べる場所ではないでしょうね。
そして、累進配当ではないこと。
これは何度でも書いておきます。次の不況で、また半分になる可能性があります。
私の考え 売らない。でも、この値段では買えない
結論はいつもと同じ形になりました。
売りません。簿価利回り6.47%を手放す理由がないからです。
買い増しもしません。
私が高配当株に求めている利回りは4%です。配当190円で計算すると、株価4,750円あたり。今から35%の下落が必要になります。
2025年12月の終値は5,000円でした。
8か月前なら、あと少しで手が届いていたことになります。もっとも、そのとき買っていればという話をしても仕方がないですね。当時の私は、たぶん別の銘柄を見ていました。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 私の簿価利回り(6.47%) | ◎ |
| 現在の利回り(2.52%) | ×(過去9年平均3.25%を下回る) |
| 配当実績(21/3期に110円→55円) | △(5年で3.5倍に戻したが、減らした事実は残る) |
| 還元方針(配当性向40%以上・自社株買い全数消却) | ○(消却は評価。ただし累進配当ではない) |
| 収益力(10年間赤字なし・営業利益率7.6〜16.0%) | ○ |
| 財務(自己資本比率51.8%) | ◎ |
| 株価水準(PER19.28倍・PBR1.91倍) | ×(同業より高い) |
| ポートフォリオでの役割 | 買値が効いている古株。買い増しの枠ではない |
この記事を書きながら、2021年のことを思い出していました。
配当が55円になったと知ったとき、私は特に何もしていません。売ろうとも思わなかったし、買い増そうとも思わなかった。
ただ持っていただけです。
いま結果を見れば、それが正解だったことになっています。5年待ったら3.5倍で返ってきたのですから。
ただ、あのとき何も考えなかったから正解になっただけで、考えた末の判断ではありませんでした。次に同じことが起きたとき、自分が同じように何もしていられるかは、まだ分かりません。
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年8月28日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
・直近の四半期決算は2026年7月29日に発表済みで、次回は11月上旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・連結配当性向40%以上は会社の方針であり、将来の配当を保証するものではありません。この会社は2021年3月期に配当を110円から55円へ減らした実績があります。累進配当(減配しない)を掲げている会社ではありません。
・自社株買い(上限1,000億円・2,500万株)および取得株の消却は2026年4月28日に取締役会で決議されたもので、実際の取得額は上限に達しない場合があります。
・売上の92%が建設機械・車両に集中しており、業績は世界の建設・鉱山需要と為替に大きく左右されます。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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