【高配当銘柄紹介】稲畑産業(8098)|PBR0.91倍の化学専門商社。累進配当で10年3.6倍の増配

高配当銘柄紹介 稲畑産業 高配当銘柄

保有株のなかで、いまも株価が会社の純資産を下回っている、めずらしい1本です。

稲畑産業(証券コード:8098)。1918年創業の化学専門商社です。

住友化学とのつながりが深く、いまはアジアを中心に世界へ広がっています。半導体の材料からプラスチックの原料まで、メーカーと使う側のあいだをつなぐ仕事です。

私の平均取得単価は2,218円。株価は4,110円まで上がって約1.9倍、簿価利回りは約6.4%になりました。そして先日、この銘柄について書くのにちょうどいい出来事がありました。

色とりどりのプラスチックのペレット
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2026年8月5日に発表された第1四半期の決算が、営業利益48.8%増という大幅な増益だったんです。

数字が新しいうちに、この会社の中身を整理しておきます。

基本データ

項目数値
証券コード8098
企業名稲畑産業株式会社
業種卸売業(化学専門商社)
株価4,110円
時価総額約2,208億円
配当利回り(予想)3.48%(143円)
PER(会社予想)10.45倍
PBR(実績)0.91倍
EPS(予想)393.39円
BPS(実績)4,523円
自己資本比率47.3%
決算期3月
私の平均取得単価2,218円(簿価利回り約6.4%

どんな会社か|「化学品のよろず屋」がいちばん近い

半導体チップ
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商社と聞くと三井物産のような総合商社を思い浮かべますよね。稲畑産業は化学分野に絞った専門商社です。売上の内訳を見ると、性格がよく分かります。

セグメント売上比率主な中身
合成樹脂49%自動車・家電・食品包装などに使うプラスチック原料
情報電子29%半導体材料、液晶パネル向けの材料や装置
化学品15%医薬・農薬の原料、工業薬品
生活産業7%食品素材、化粧品原料など

いちばん大きいのは合成樹脂ですが、利益を伸ばしているのは情報電子のほうです。

半導体や液晶の材料を、メーカーと使う側のあいだでつなぐ仕事。完成品を作るわけではないので表には出ませんが、スマホもテレビも自動車も、こういう会社を経由した材料でできています。

三井物産の記事で総合商社の話を書きましたが、専門商社は守備範囲が狭いぶん、その分野に深く食い込んでいるのが強みです。資源価格に振り回されにくいのも、総合商社との違いですね。

配当の推移|10年で3.6倍、そして減配なし

稲畑産業の1株配当の推移(10年)

1株配当は2017年3月期の40円から、2027年3月期予想の143円へ。10年で3.6倍です。

この10年で減配は一度もありません。

注目したいのは、この会社が累進配当を掲げていることです。中期経営計画「New Challenge 2026」で、前期の配当実績を下限として、減配せずに増やし続けると明言しています。さらに、配当と自社株買いを合わせた総還元性向にも目標を置いています。三井物産と同じ累進配当ですが、規模はまるで違います。

時価総額2,208億円の中堅企業が、大手と同じ約束をしている。こういう会社を見つけると、少し嬉しくなりますね。

しかも、この方針は2026年5月に一段強くなりました。2027年3月期から、還元の基準にこの3つが並んでいます。

方針内容
DOE 4〜4.5%(新設)配当総額を「自己資本に対する比率」で決める
累進配当前年度の配当額を下限とし、減配しない
総還元性向 50%以上従来の「50%程度」から引き上げ

個人的にいちばん注目したのが、新しく入ったDOE(株主資本配当率)です。配当性向は利益に連動するので、業績が落ちれば配当も減りやすい。

いっぽうDOEは、これまで積み上げてきた自己資本に対する比率なので、一時的に利益が落ちても配当が下がりにくいという性質があります。累進配当と組み合わせると、減配のリスクはさらに小さくなります。

業績の推移|売上8,000億円台、利益率3%の商社らしさ

稲畑産業の売上高と営業利益率の推移

売上高は10年で5,866億円から8,900億円(予想)へ。営業利益率は3%前後で、これは商社としては普通の水準です。仕入れて売る仕事なので、メーカーのような高い利益率にはなりません。

目を引くのは2018年3月期の落ち込みです。営業利益率が0.96%まで下がりました。取引先の在庫調整が重なった年でしたが、それでも配当は40円を維持しています。

利益が半減しても減配しなかったという事実が、この会社の姿勢を示しています。

稲畑産業のROEの推移

ROEは合格ラインの8%を、直近5期はすべて上回っています。2022年3月期は12.78%とピークをつけました。商社は薄利多売なので利益率は低くても、少ない資本で回すぶんROEは高く出ます。

EPSと配当性向|まだ増やす余地がある

稲畑産業のEPSと配当性向の推移

EPSは156円から393円(予想)へ、10年で約2.5倍。配当性向は25〜36%のレンジで推移していて、2027年3月期予想は36.3%です。ここで効いてくるのが、総還元性向50%以上という方針です。

配当性向が36%ということは、残りの14%以上は自社株買いに回るという計算になります。

実際、2025年は100万株・32億800万円を買い付けて、そのすべてを7月末に消却しました。発行済株式の1.83%が、この世から消えたことになります。

買った株を消却すると株数が永久に減るので、1株あたりの利益も配当も自動的に押し上がります。買い戻して金庫に置いておくだけの会社も多いなかで、消却まで実行する会社は本気度が違うと思っています。

同じく還元性向50%を目標に掲げるバルカーと比べても、配当そのものの比率はまだ控えめです。

そのぶん、増配の伸びしろが残っていると見ています。

株価の動向|5年で2.4倍、それでもPBR0.91倍

稲畑産業の株価推移(10年・取得単価のライン入り)

2016年から2021年までは1,000〜1,700円台の狭いレンジでした。

私の取得単価2,218円は、動き出した2022年ごろの水準です。そこから株価は約1.8倍。5年でみればおよそ2.4倍です。

それでもPBRは0.91倍。株価が会社の純資産を下回っている状態が、いまも続いています。1株あたりの純資産は4,523円で、株価は4,110円。解散したときの価値より安く買える計算です。

商社は保有する在庫や事業投資の評価が難しく、市場から低く見られやすい業種です。

それでも、東証がPBR1倍割れの改善を求めている流れのなかで、この水準がいつまで続くのかは注目しています

配当利回りの推移と、いまの割安度

稲畑産業の配当利回りの推移(各年末時点)

各年末の利回りをたどると、2021年末の6.56%が最高でした。株価が停滞したまま配当が110円へ大幅増配された年です。

あの時期に買えていれば、簿価利回り6%超が手に入っていました。当時この会社の名前すら知らなかったので、悔しがる資格もないのですが、それでもチャートを眺めるたびに、あと1年早く高配当株に手を出していればと考えてしまいます。

現在の利回りは3.48%。過去9年平均の3.97%はやや下回りますが、3.5%台を維持しているのは、株価の上昇に配当が追いついてきた証拠でもあります。

予想PER(株価収益率)
10.45倍
過去のPERレンジ6〜13倍
類似企業PER長瀬産業 約13倍
減配実績直近10期なし
PBR(株価純資産倍率)
0.91倍
自己資本比率47.3%
ROE(27/3期予想)8.70%
還元方針累進配当・DOE4〜4.5%
2026年8月10日終値・2026年3月期実績ベース

直近の決算|営業利益48.8%増のスタート

クリーンルームで作業する技術者
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2026年8月5日に発表された2027年3月期の第1四半期は、売上高2,437億円(前年同期比19.4%増)、営業利益98億円(同48.8%増)。

通期予想275億円に対して、3か月で35.6%を達成しました。

商社の四半期は取引のタイミングでぶれるので、この進捗がそのまま通期につながるとは限りません。それでも、期初からこの水準で走り出せたのは素直にいい話です。会社側は通期予想を据え置いていますが、この調子なら上方修正の可能性も出てきます。

私がこの株を持ち続ける理由

累進配当を掲げる中堅企業だから

大手が累進配当を掲げるのは珍しくありませんが、時価総額2,000億円規模でここまで明言する会社は多くありません。配当で月20万円を目指す計画で怖いのは減配です。会社側が「減らさない」と先に宣言してくれている銘柄は、それだけで土台になります。

PBR0.91倍という下値の堅さ

純資産を下回る株価は、下落局面での支えになりやすい。

実際に2020年のコロナショックでも、この銘柄は他の保有株ほど深くは沈みませんでした。派手に上がらない代わりに、派手に下がりにくい。ポートフォリオの重心を安定させる役です。

半導体という成長分野に、安く乗れるから

情報電子セグメントは売上の29%で、利益の伸びを引っ張っています。

半導体関連というだけでPER30倍を超える会社が多いなかで、この会社はPER10倍。同じテーマに、ずいぶん違う値段で乗れているわけです。

リスクと注意点

まず、利益率が薄いこと。営業利益率は3%前後で、仕入れ価格や為替の影響が利益に直結します。2018年3月期のように、利益が半分になる年もあります。

次に、半導体市況の波を受けること。情報電子が利益を引っ張っているぶん、半導体サイクルが下向きになれば業績も鈍ります。景気敏感株であることは変わりません。

そして、PBR1倍割れが解消しない可能性。

割安に見えても、市場が商社を低く評価する状態が続けば、株価は動きません。「安いから上がる」とは限らない点は、正直に書いておきます。

最後に為替です。アジアを中心に海外展開しているため、円高は業績の逆風になります。

私の考え|買い増しの候補に入れている

取得単価の1.8倍。上昇率としては保有株のなかで控えめなほうです。それでも、この銘柄は売らずに買い増しの候補に入れています。

理由は、PBR0.91倍・PER10倍・利回り3.48%・累進配当という組み合わせが、いまの相場ではあまり残っていないからです。

株価が上がった銘柄ばかりのポートフォリオのなかで、まだ「安いまま」の1本を持っておきたい。

利回りが4%を超える場面、株価でいえば3,500円台まで下がってきたら買い増します。

お金を使えない病の私でも、この条件なら手が動きそうです。

まとめ

項目評価
私の簿価利回り(約6.4%)
現在の利回り(3.48%)○(過去平均3.97%をやや下回る)
配当実績(10年で3.6倍・減配なし・累進配当)
収益力(営業利益率3%・ROE8.7%)△(商社としては標準)
財務(自己資本比率47.3%)
株価水準(PER10.45倍・PBR0.91倍)◎(純資産割れ)
ポートフォリオでの役割割安・累進配当の守り役。半導体にも安く乗れる

利益率は低く、株価も派手には動きません。それでも10年で配当を3.6倍にして、一度も減らさなかった。

こういう会社が、配当で暮らす計画のいちばん下を支えてくれるのだと思っています。

⚠ 注意点
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、すべて執筆時点のものです。株価は直近の終値、業績と配当は直近の本決算実績と会社予想に基づいています。
・直近の四半期決算は2026年8月5日に発表済みで、次回は10月下旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・累進配当・DOE4〜4.5%・総還元性向50%以上は会社の方針であり、将来の配当を保証するものではありません。業績や方針の変更によって減配される可能性があります。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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