高配当株として買ったのに、今は高配当ではなくなった1本です。
ENEOSホールディングス(証券コード:5020)。ガソリンスタンドでおなじみの、日本最大の石油元売りです。
私の平均取得単価は483円。株価は1,313円まで上がって、約2.7倍になりました。
といっても、飛び抜けた成績ではありません。
値上がり率でいえば、保有株のなかでは上から2割くらいの位置です。6倍を超えている株もあるので、この2.7倍は「よく上がったほう」という程度になります。
ただ、株価が上がるということは、利回りが下がるということでもあります。私の簿価利回りは約7.0%。今買う人の利回りは2.59%。同じ株で、これだけ差がついています。
この銘柄を、今どう見ればいいのか。整理します。

基本データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 証券コード | 5020 |
| 企業名 | ENEOSホールディングス株式会社 |
| 業種 | 石油・石炭製品(石油元売り・金属・電力) |
| 株価 | 1,313.0円 |
| 時価総額 | 約3兆5,540億円 |
| 配当利回り(予想) | 2.59%(34円) |
| PER(会社予想) | 8.49倍 |
| PBR(実績) | 0.93倍 |
| EPS(予想) | 154.65円 |
| BPS(実績) | 1,406.07円 |
| 自己資本比率 | 37.1% |
| 決算期 | 3月 |
| 私の平均取得単価 | 483円(簿価利回り約7.0%) |
どんな会社か|石油だけの会社ではない

ENEOSと聞けば、まずガソリンスタンドですよね。
実際、国内のガソリン販売シェアは5割近く。石油の精製から販売までを一貫して持つ、圧倒的な最大手です。
ただ、それだけの会社でもありません。
電力の小売、電子材料などの機能材、石油や天然ガスを掘る開発事業、そして再生可能エネルギー。売上12兆円という規模は、石油の販売だけで積み上がったものではありません。
| セグメント | 売上比率 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 石油製品ほか | 88% | ガソリン・軽油・重油などの精製と販売 |
| その他 | 4% | 石油化学品など |
| 機能材 | 3% | 電子材料や潤滑油などの素材 |
| 電気 | 3% | 電力の小売 |
| 石油・天然ガス開発 | 2% | 原油・天然ガスの探鉱と生産 |
| 再生可能エネルギー | 0.4% | 太陽光・風力など |
※2026年3月期の実績。四捨五入のため合計は100%になりません。
ひとつ補足しておくと、かつて中核だった金属事業(JX金属)は2025年3月に上場して独立しました。ENEOSの持分は下がり続けていて、今は連結の売上に乗っていません。「銅も扱う会社」というイメージで見ていると、実態とずれます。
問題は、この事業構成がそのまま景気と資源価格に直結することです。原油が上がれば在庫の評価益が乗り、下がれば評価損が出る。会社の実力とは別のところで、利益が大きく揺れます。
このあと出てくるグラフの荒っぽさは、ほぼそれが理由です。
配当の推移|赤字の年でも、減らさなかった

1株配当は2017年3月期の16円から、今期予想の34円へ。10年で約2.1倍です。
伸び方は地味に見えます。22円のまま5年間ほとんど動かない時期もありました。
それでも、この10年で一度も減配していません。
私がこの会社を評価しているのは、その中身のほうです。
2020年3月期、ENEOSは最終赤字でした。1株あたり58円の損失です。それでも配当は22円。前期の21円から、むしろ増やしています。
利益が消えた年に配当を増やす会社は、そう多くありません。
株主還元方針|累進配当と、全部消す自社株買い
会社が掲げている還元方針は、はっきりしています。
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| 累進配当(起点30円) | 30円/株を下限に、業績に応じて増配。減配しない |
| 総還元性向 50%以上 | 3カ年平均。在庫影響を除いた当期利益が基準。配当と自社株買いの合計 |
ここで効いているのが「在庫影響を除いた」という一文です。
原油価格の上下で出る評価損益を計算から外す、という意味ですね。相場のブレで還元額が振り回されないようにしてある。石油会社としては、かなり考えられた設計だと思います。
そして自社株買いです。
会社が公表している実績を並べると、2017年度から300億円、300億円、489億円、1,000億円、そして2023〜2024年度は2,500億円。規模も大きいのですが、注目すべきはその後です。
買い戻した株を、5回とも全部消却しています。
消却すると株数が永久に減るので、1株あたりの利益も配当も自動的に押し上がります。金庫に置いたままにする会社も多いなかで、稲畑産業の記事でも書いたとおり、ここまでやる会社は本気度が違います。
業績の推移|10年で2回、赤字になっている

ここからは、目をそらしたくなる話です。
売上高は7兆円から12.9兆円(今期予想)へ。数字だけ見れば立派ですが、問題は利益率のほうです。
営業利益率は-1.13%から7.20%まで、毎年のように暴れています。2020年3月期はマイナス、2025年3月期も0.86%。安定という言葉からは、いちばん遠い会社です。

ROEも同じです。18.78%の年があるかと思えば、マイナス8%の年もある。
グラフに載せていない2016年3月期も赤字でした。10年ちょっとのあいだに、最終赤字が2回。景気敏感株というより、資源価格そのものに乗っている株です。
この荒さを知ったうえで持てるかどうかが、この銘柄の分かれ目だと思っています。
EPSと配当性向|配当の安定は、利益の安定ではない

この2枚を並べると、この会社の性格がよく分かります。
EPSは-58円から167円までジェットコースターなのに、配当のグラフはさっき見たとおり、ほとんど階段状でした。
結果として配当性向は13.2%から62.0%まで飛びます。2020年3月期にいたっては、赤字なので計算すらできません。
利益は暴れるが、配当は動かさない。これがENEOSのやり方です。
今期の配当性向は21.8%の予想。過去のレンジからすれば低い部類なので、増配の余地は残っていると見ています。
株価の動向|2年で株価が3倍近くになった

まず、真ん中の平らなところを見てください。
2019年から2023年までの5年間、株価は350円から590円のあいだを行ったり来たりしているだけです。5年かけて、ほとんど動いていません。
原油と為替で利益が揺れる会社が、市場から評価されにくかった時期でした。
動き出したのは2024年からです。そこから1年半ほどで株価は3倍近くになり、2026年2月には1,488円の高値をつけました。今は1,313円。
5年動かず、そのあと一気に。高配当株の「報われ方」は、たいてい急に来るのだと、このグラフは教えてくれます。
配当利回りの推移と、今の位置

このグラフが、いちばん現実を映しています。
2020年末の利回りは5.94%でした。コロナで株価が370円まで落ちていた年です。その値段で買えた人なら、今の配当34円で簿価利回りは9%を超えます。
そこから利回りは下がり続けて、2025年末は2.35%。今は2.59%と少し戻しましたが、水準はグラフの下のほうのまま。
過去9年の平均は3.85%ですから、今はその平均をかなり下回っています。高配当株のスクリーニングに、この銘柄はもう引っかかりません。
配当が減ったからではありません。株価が上がったからです。
直近の決算|3か月で、1年分を稼いでしまった
2026年8月7日に、2027年3月期の第1四半期決算が発表されました。
売上高3兆4,078億円(前年同期比18.74%増)。当期利益は4,149億円で黒字転換です。前年の同じ時期は赤字でした。
数字を見ていて、思わず二度見したのはここからです。
同じ日に修正された通期の当期利益予想が4,150億円。第1四半期の実績が4,149億円ですから、3か月で通期予想をほぼ使い切ったことになります。
進捗率でいえば、ほぼ100%。
もっとも、これを素直に喜んでいいのかは分かりません。石油会社の四半期利益は在庫の評価益で大きく動くので、第1四半期に原油高の恩恵が集中した可能性があります。会社が通期予想を引き上げきっていないのも、そのあたりを警戒しているからでしょう。
次の四半期を見るまでは、判断を保留しておこうと思っています。
私がこの株を持ち続ける理由
赤字でも減らさなかった実績があるから
方針としての累進配当は、他社にもあります。
ただ、実際に最終赤字を出した年に減配しなかった会社は、そう多くありません。ENEOSは2020年3月期にそれをやっています。配当で月20万円という計画で怖いのは減配ですから、この1点は大きい。
簿価利回りが7%あるから
取得単価483円に対して、今期の配当は34円。簿価利回りは約7.0%です。
今買えば2.59%ですから、その差は4.4ポイント以上。先に買っておいた時間が、そのまま利回りに変わっています。この差は、株価が上がるほど広がっていきます。
まだPBR1倍を割っているから
株価が2.7倍になっても、PBRは0.93倍。PERも8.49倍です。
同業と並べると、もっとはっきりします。出光興産のPERは21.7倍、コスモエネルギーホールディングスは15.1倍。ENEOSだけが8.49倍です。
3倍近く上がったあとでこの水準というのは、それだけ元が安かったということでもあります。売り時を考える段階にはまだ見えません。
リスクと注意点

まず、利益が資源価格で決まること。原油と為替次第で、営業利益率はマイナスにもなります。10年で2回の赤字は、たまたまではありません。
次に、今の利回りが2.59%しかないこと。
これから買う人にとって、この銘柄はもう高配当株ではありません。過去9年の平均3.85%を大きく下回っています。私が持ち続ける理由と、今買う理由は別物だという点は、はっきり書いておきます。
そして、長期の構造問題です。
国内のガソリン需要は、人口減少と電動化で減っていきます。会社も再生可能エネルギーや素材へ軸足を移そうとしていますが、それが石油の利益を置き換えるところまで来ているとは、まだ言えません。10年、20年で見たときの絵は、まだ描けていないと思います。
私の考え|売らないが、買い増しもしない
結論はこうなりました。
売りません。簿価利回り7%を手放す理由がないからです。
ただ、今の水準で買い増すこともしません。
2.59%という利回りは、私が高配当株に求めている数字ではないからです。同じお金を出すなら、今利回り4%台で買える銘柄のほうを選びます。
買い増しの目安は、利回り4%。配当34円で計算すると、株価850円あたりです。今から3割以上の下落が必要なので、当分は出番がないでしょうね。
それでいいのだと思っています。持っている株が高すぎて買い増せない、というのは悪い悩みではありません。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 私の簿価利回り(約7.0%) | ◎ |
| 現在の利回り(2.59%) | ×(過去9年平均3.85%を大きく下回る) |
| 配当実績(10年減配なし・赤字の年も維持) | ◎ |
| 還元方針(累進配当・総還元50%以上・全額消却) | ◎ |
| 収益力(営業利益率-1.1〜7.2%・赤字2回) | ×(資源価格次第) |
| 財務(自己資本比率37.1%) | ○ |
| 株価水準(PER8.49倍・PBR0.93倍) | ○(上昇後もまだ1倍割れ) |
| ポートフォリオでの役割 | 買値が効いている古株。新規に足す枠ではない |
この記事を書きながら、ずっと考えていたことがあります。
高配当株投資の成果は、銘柄選びよりいくらで買ったかで決まるのではないか、ということです。
同じENEOSでも、483円で買った私と1,313円で買う人とでは、受け取る利回りが2.7倍違います。会社の中身は1ミリも変わっていないのに。
だとすると、いちばん大事なのは安く買える時期に買えるかどうか。そしてそういう時期は、たいてい景気が悪くて誰も買いたくない時期です。
次にその時期が来たとき、自分がちゃんと買えるかどうかは、まだ自信がありません。
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年8月26日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
・直近の四半期決算は2026年8月7日に発表済みで、次回は11月上旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・累進配当(30円を起点)および総還元性向50%以上(3カ年平均・在庫影響除き)は会社の方針であり、将来の配当を保証するものではありません。業績や方針の変更によって減配される可能性があります。
・この会社は10年間で2回の最終赤字を計上しており、利益は原油価格と為替に大きく左右されます。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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