先月末に決算が出て、通期の見通しが引き上げられた銘柄です。
豊田通商(証券コード:8015)。トヨタグループの商社です。
私の平均取得単価は1,860円。今の株価は7,226円なので、3.9倍になりました。保有している94銘柄のなかで、いちばん増えている株です。
ただ、今の配当利回りは1.73%しかありません。高配当株として人にすすめられる数字ではないです。
それでも私の簿価利回りは6.72%あります。この差がどこから生まれたのかを、今回は書いておきます。
基本データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 証券コード | 8015 |
| 企業名 | 豊田通商株式会社 |
| 業種 | 卸売業(商社) |
| 株価 | 7,226円 |
| 時価総額 | 約6兆8,219億円 |
| 配当利回り(予想) | 1.73%(125円) |
| PER(会社予想) | 15.76倍 |
| PBR(実績) | 2.62倍 |
| EPS(会社予想) | 458.58円 |
| BPS(実績) | 2,759.46円 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 30.8% |
| 決算期 | 3月 |
| 私の平均取得単価 | 1,860円(簿価利回り6.72%) |
※株価・配当・EPSは、2024年7月1日の株式分割(1株→3株)に合わせた数字です。この記事のグラフもすべて分割調整後でそろえています。
どんな会社か|利益のトップはアフリカ

豊田通商という名前から、多くの人はトヨタの部品を運ぶ会社を思い浮かべると思います。
私もそう思っていました。
ところがセグメント別の利益を見ると、景色がまったく違います。
| セグメント | 当期利益 | 構成比 |
|---|---|---|
| アフリカ | 940億円 | 25.4% |
| モビリティ | 640億円 | 17.3% |
| サプライチェーン | 528億円 | 14.2% |
| サーキュラーエコノミー | 448億円 | 12.1% |
| メタル+ | 432億円 | 11.7% |
| デジタルソリューション | 340億円 | 9.2% |
| ライフスタイル | 207億円 | 5.6% |
| グリーンインフラ | 179億円 | 4.8% |
※2026年3月期。ほかに「その他」△9億円があります。
利益のいちばんはアフリカ事業で、全体の4分の1を稼いでいます。トヨタ車を売る本業(モビリティ)を上回っている。
アフリカでは新車販売や整備だけでなく、医薬品の生産や卸売までやっています。大陸のほぼ全域に拠点があって、この分野で日本企業の競合はほとんどいません。
「トヨタの商社」ではなく、アフリカで稼ぐ会社。そう覚えたほうが実態に近いと思います。
配当の推移|11年で6.05倍、しかも赤字の年に増配した

20.67円から125円へ。11年で6.05倍です。
グラフを見ていただくと分かるとおり、1回も減っていません。
ただ、私がこの会社を見直したのは、倍率のほうではありませんでした。
左端の2016年3月期を見てください。
この期、豊田通商は192億円の赤字を出しています。資源価格の下落で、大きな減損を計上した年です。
それでも配当は、前期の20.67円から23.33円へ増えました。
赤字の年に増配する会社は、そう多くありません。INPEXのように「赤字でも配当を出した」銘柄は書いてきましたが、赤字で増やしたのは記憶にないですね。
配当を利益の結果ではなく、株主との約束として扱っている。そういう会社だと受け取りました。
実際、これは私の印象ではなく会社の方針でした。中期経営計画(2026年3月期〜2028年3月期)に、こう書かれています。
累進配当を継続し、自己株式取得を含む総還元性向40%以上を目指す。
累進配当とは「配当を減らさない、維持または増やす」という約束です。三井物産と同じ考え方ですね。会社の資料には「18期連続増配予定」とも書かれています。
業績の推移|10年で純利益が3.4倍

ここでも売上高のグラフは作っていません。
商社の売上高は、右から左へ流した金額まで積み上がるので、規模は分かっても稼ぐ力は見えないからです。三井物産や伊藤忠の記事と同じく、純利益で見ます。
2017年3月期の1,079億円から、2026年3月期は3,705億円。10年で3.4倍になりました。
ROEは9%台から14%台のあいだで動いています。合格ラインとされる8%を、赤字の年を除いてすべて上回っている。MS&ADのところで「11年で1回しか8%を超えていない」と書いたばかりなので、並べると差がはっきりします。
ただし商社は、資源価格でぶれます。2016年3月期の赤字がその証拠で、いい時期の数字だけを見て安心する銘柄ではありません。
EPSと配当性向|配当性向は30%前後で安定

配当性向の線が、めずらしく落ち着いています。
22.8%から34.2%のあいだで、10年ずっと横ばい。ほかの銘柄で見てきたような、跳ね上がったり沈んだりという動きがありません。
これは利益とほぼ同じ速さで配当を増やしてきたということです。
EPSは102円から351円へ、配当は23.33円から120円へ。どちらも3.4倍から5倍のあいだで、歩調がそろっています。無理をして配当を出してもいないし、利益を貯め込んでもいない。
今期の予想は27.3%です。まだ余裕があります。
株価の動向|3年で4倍近くになった

2016年から2022年までの6年間、株価は1,000円台から1,700円台で行ったり来たりしていました。
動き出したのは2023年です。そこから3年で、1,800円台が7,226円になりました。
私の取得単価1,860円は、この横ばいだった時期の水準です。株価が動き出す前に買えたかどうか、それだけの差でした。
実力で当てたわけではありません。高配当株を分散して買っていたら、そのうちの1つがたまたま伸びた。それだけの話です。
年初来では安値5,401円から高値7,620円まで動いています。
配当利回りの推移と、今の位置

現在の利回りは1.73%です。
過去10年の平均が2.48%なので、平均をかなり下回っています。グラフでいちばん低い年が2017年の1.54%で、今はそれに次ぐ低さです。
配当は毎年増えているのに利回りが下がるのは、株価の上がり方が配当を追い越しているからです。3年で株価4倍に対して、配当は同じ期間で2倍弱。差が開けば利回りは落ちます。
高配当株のスクリーニングには、まず引っかからない水準です。
直近の決算|上方修正と、株数11%減

2026年7月31日に、2027年3月期の第1四半期決算が発表されました。
収益3兆5,701億円(前年同期比37.6%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益1,352億円(同37.5%増)。大幅な増収増益です。
そして会社は同じ日に、通期予想を4,300億円へ上方修正しました。前期の3,705億円から16.1%増です。
ただ、私がいちばん驚いたのは利益ではありませんでした。
| 時点 | 発行済株式数 |
|---|---|
| 2026年3月期末 | 10億6,216万株 |
| 2027年3月期 第1四半期末 | 9億4,407万株 |
3か月で、株数が11.1%減っています。
自己株式を買って、そのまま消したということです。1億株以上が消えた計算になります。
株数が1割減れば、同じ利益でも1株あたりは1割増えます。会社の予想EPSが458.58円と、前期の350.95円から3割も伸びているのは、利益の増加だけでなくこの株数減が効いているからですね。
その代わり、親会社所有者帰属持分比率は前期末の37.0%から30.8%へ低下しました。自己株買いは自己資本を削るので、当然そうなります。
攻めの還元です。同時に、財務の余裕を使ったということでもあります。
私がこの株を持ち続ける理由
簿価利回りが6.7%あるから
1,860円で買って、今125円を受け取っています。
今の株価で買った人の利回りは1.73%ですが、私にとっては6.72%です。同じ株でも、買った値段で意味がまったく変わる。配当で月20万円を目指すうえで、この水準を手放す理由がありません。
配当を減らさない会社だから
11年間、1度も減配していません。
しかも赤字の年に増配しています。配当性向も30%前後で無理がない。次に資源価格が崩れて赤字になっても、この会社は配当を守るだろうと考えています。根拠は、前回そうしたからです。
アフリカという他社にない柱があるから
利益の4分の1を稼ぐ事業を、他の商社は持っていません。
アフリカは人口が増え続ける地域です。50年かけて築いた販売網は、あとから資金を積んでも簡単には作れない。総合商社の記事を4本書いてきましたが、この会社だけが持っている強みだと思っています。
リスクと注意点

気になるところを4つ書いておきます。
1つめは、今の利回りの低さです。
1.73%は、高配当株として買う水準ではありません。私の簿価利回り6.72%は過去の買値がもたらしたもので、今から同じことはできない。この記事を読んで「利回り6.7%の株」と受け取らないでください。
2つめは、資源価格です。
2016年3月期に赤字を出した原因がこれでした。金属やエネルギーの価格が崩れれば、利益は一気に削れます。今回の上方修正も、資源とメモリ関連の市況が上がったことが理由です。上がる理由は、下がる理由にもなります。
3つめは、PBR2.62倍という水準です。
商社としてはかなり高い部類です。稲畑産業を書いたときはPBR0.91倍でした。3倍近い開きがあります。市場がこの会社を「商社」ではなく「成長企業」として見ている、ということでもあります。期待が剥がれたときの下げは大きくなります。
4つめは、アフリカへの依存です。
強みは、そのまま弱みでもあります。政情不安、通貨の急落、規制の変更。日本にいると想像しにくい種類のリスクが、利益の4分の1にかかっています。
私の考え|売らない。買い増しはしない
売りません。
簿価利回り6.72%を手放す理由がないからです。株価が4倍になったから利確する、という考え方も分かりますが、売ってしまえば毎年の125円が消えます。私が欲しいのは値上がり益ではなく、配当のほうです。
ただし、買い増しもしません。
私が高配当株に求める利回りは4%です。配当125円で逆算すると株価3,125円で、今の7,226円から57%の下落が必要になります。年初来安値でも5,401円ですから、現実的な距離ではありません。
この株については、もう「増やす」段階は終わったと考えています。
持ち続けて、配当が増えるのを待つだけです。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 私の簿価利回り(6.72%) | ◎ |
| 現在の利回り(1.73%) | ×(過去10年平均2.48%を大きく下回る) |
| 配当実績(11年で6.05倍・減配なし) | ◎ |
| 配当の質(赤字の年も増配) | ◎ |
| 還元方針(3か月で株数11.1%減) | ◎(ただし持分比率は37.0%→30.8%) |
| 収益力(10年で純利益3.4倍・ROE11〜14%) | ◎(2016年3月期に赤字1回) |
| 株価水準(PER15.76倍・PBR2.62倍) | ×(商社としてはPBRが高い) |
| ポートフォリオでの役割 | アフリカという他社にない柱 |
この記事を書きながら、ひとつ考えたことがあります。
私はこの株を、選んで買ったわけではありません。
高配当株を90銘柄以上に分散させていく過程で、たまたま含まれていた1つです。当時の利回りが基準を満たしていたから買った。それだけでした。
その1つが、いちばん増えました。
どれが伸びるかを事前に当てられるなら、分散する必要はありません。当てられないから、数を持つ。この株は、その考え方が間違っていなかったことを示す1本になっています。
もっとも、同じ理屈で伸びなかった銘柄も抱えているわけですが。
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年8月21日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
・株価・配当・EPSは2024年7月1日の株式分割(1株→3株)に合わせて調整した数字です。分割前の資料と比べる際はご注意ください。
・直近の四半期決算は2026年7月31日に発表済みで、同日に通期業績予想の上方修正が公表されています。次回は11月上旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・予想EPS458.58円は決算短信の開示値です。情報サイトによっては上方修正前の株数で計算した数値が表示されている場合があります。
・商社の業績は資源・エネルギー価格や為替の影響を大きく受け、年によって変動します。2016年3月期には当期損失を計上しています。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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