【高配当銘柄紹介】NTT(9432) 含み益10%の株を、なぜ売らないのか。16期連続増配と利回り3.1%

高配当銘柄

保有株のなかで、いちばん動いていない1本です。

NTT(証券コード:9432)。日本電信電話、と書けば分かりやすいでしょうか。

平均取得単価は157円。今の株価は173.2円です。含み益は10%ほどしかありません。

これまでこのブログで紹介してきた銘柄は、株価が2倍、3倍になったものばかりでした。ニチアスは3.6倍コマツは2.6倍です。

その並びにNTTを置くと、見事に見劣りします。

それでも売っていません。むしろ、この銘柄がいちばん「高配当株らしい」と思っています。今日はその話です。

通信機器につながる光ファイバーケーブル
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基本データ

項目数値
証券コード9432
企業名日本電信電話株式会社(NTT)
業種情報・通信業(通信インフラ・IT・不動産)
株価173.2円
時価総額約15兆6,833億円
配当利回り(予想)3.12%(5.4円)
PER(会社予想)14.39倍
PBR(実績)1.43倍
EPS(予想)12.04円
BPS(実績)121.07円
自己資本比率20.8%
決算期3月
私の平均取得単価157円(簿価利回り3.44%

株価・配当・EPS・BPSは、2023年7月の株式分割のあとの数字にそろえています。

どんな会社か、あらためて確認した

説明の要らない会社ですが、中身を数字で見たことはありませんでした。事業は4つに分かれています。

セグメント売上比率主な中身
総合ICT事業45%NTTドコモ。携帯電話と金融・決済
グローバル・ソリューション事業35%NTTデータなど。法人向けのITと海外事業
地域通信事業22%NTT東日本・西日本。光回線などの固定通信
その他(不動産、エネルギー等)12%都市開発、電力

※2026年3月期。セグメント間の取引を消去する前の数字なので、合計は100%を超えます。

意外だったのは、ドコモだけの会社ではなくなっていることでした。法人向けITと海外事業がすでに売上の35%を占めています。

利益で見ると、その傾向はもっとはっきりします。2026年3月期の営業利益は、ドコモを含む総合ICT事業が9,400億円で7.7%の減益。一方でグローバル・ソリューション事業は4,882億円で50.7%の増益でした。

携帯が伸び悩み、法人と海外が伸びている。通信会社というより、通信もやっているIT企業に近づいているように見えます。

街を歩きながらスマートフォンを使う人たち
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配当は10年で2.25倍。16期連続で増えている

NTTの1株配当の推移

2017年3月期の2.4円から、2027年3月期予想の5.4円へ。10年で2.25倍です。

派手さはありません。ニチアスの3.75倍に比べると伸びは緩やかです。

ただ、この銘柄の価値は伸び幅ではなく、一度も止まっていないことにあります。

会社は「継続的な増配」を還元の基本方針に掲げていて、IR BANKの配当履歴をさかのぼると、2012年3月期から今期予想まで16期連続で増配しています。リーマンショックの後も、コロナの年も、増やし続けてきた計算になります。

増配の幅は、ここ数年は毎年0.1円です。1株5.3円が5.4円になる。地味ですが、止まらない。

株主還元の方針は、言葉が短い

方針内容
継続的な増配配当性向やDOEの数値目標は置かず、増配を続けることを基本方針にしている
機動的な自己株式取得2026年5月8日に上限2,000億円を決議(2027年3月末まで)
自己株式取得の累計2026年3月までで約5.9兆円

隠さずに書くと、三菱HCキャピタルの累進配当や、ニチアスの「DOE5%以上」のような数値の約束はありません。

代わりにあるのが、自己株式取得の規模です。累計で約5.9兆円。今の時価総額が15.3兆円ですから、時価総額の4割近い金額を買い戻してきたことになります。

株数が減れば1株あたりの利益は増えます。配当の原資も増える。派手な方針を掲げない代わりに、実際の行動で株主に返してきた会社だと読めます。

業績は伸びている。ただし利益率は落ちている

NTTの営業収益と営業利益率の推移

営業収益は11.4兆円から15.1兆円(今期予想)へ、10年で1.3倍。売上は着実に増えています。

気になるのは下の折れ線です。営業利益率が14%台から11.35%(今期予想)まで落ちてきました。

2025年3月期に12.04%へ下がり、そこから戻っていません。売上は増えているのに利益率が落ちるということは、増えた売上の中身が、以前より薄利になっているということです。

NTTのROEの推移

ROEも2022年3月期の14.26%をピークに、今期予想は9.94%。10%を割り込む見込みです。

それでも合格ラインの8%は超えています。ここは押さえておきたいところ。

EPSは3年前がピーク。配当性向は44.9%へ

NTTのEPSと配当性向の推移

EPSは2024年3月期の15.09円がピークで、今期予想は12.04円です。3年前より2割ほど少ない。

その一方で配当は増え続けているので、配当性向は上がります。今期予想は44.9%。10年前の30.7%からは、だいぶ上がってきました。

利益が減っても配当を増やす。ここ数年のNTTは、その形になっています。

配当性向44.9%はまだ余裕がある水準ですが、この形が何年も続けられるわけではありません。利益がもう一段落ちれば、増配の幅はさらに小さくなるはずです。

直近の決算は、増収増益だった

2026年8月6日に、2027年3月期の第1四半期決算が発表されました。

営業収益3兆6,177億円(前年同期比10.9%増)、営業利益4,251億円(同4.9%増)、当期純利益2,748億円(同5.8%増)。増収増益です。

ただし通期予想は当期純利益9,800億円で、前期の1兆370億円から5.5%の減益。第1四半期は好調でも、通期の見通しは下向きのままでした。

2026年3月期に、財務が大きく変わった

この記事を書いていていちばん驚いたのが、ここでした。

総資産は30.1兆円から46.7兆円へ。有利子負債は11.2兆円から16.9兆円へ。自己資本比率は34.0%から20.8%へ下がりました。

1年で総資産が16兆円増え、自己資本比率が13ポイント下がっています。

同じ時期に起きたことが2つあります。ひとつはNTTデータグループの完全子会社化(約2.37兆円)。もうひとつは、住信SBIネット銀行が2025年10月1日にNTTドコモの連結子会社になったことです。

銀行を連結に取り込むと、預金や貸出金がそのまま総資産に乗ります。総資産が一気に膨らみ、自己資本比率は見かけ上下がる。おそらくこれが効いています。

とはいえ、有利子負債が5.7兆円増えたのは事実です。金利が上がる局面では、この重さが効いてきます。指標ボックスの自己資本比率20.8%は、そういう背景の数字だと思って見てください。

157円が173.2円になった

NTTの株価推移(直近10年・分割後ベース)

この10年の値動きです。

2016年から2021年まで、株価は90円から110円あたりを行ったり来たりしていました。動いたのは2021年からで、2024年1月に186円まで上がっています。

そこからが問題でした。

2024年前半に150円台まで落ちて、そのあと2年以上、150円から170円のあいだをずっと往復しています。今年6月には145円まで下げました。今は173.2円。

私が買ったのはこの往復のなかです。だから含み益が10%しかない。

退屈な株、という言い方すら生ぬるい気がします。

配当利回りの推移と、今の位置

NTTの配当利回りの推移(各年末時点)

現在の利回りは3.12%。過去9年の平均は3.13%です。

ほぼ平均どおり。

グラフを見ると、この10年でいちばん高かったのが2020年末の3.59%、低かったのが2017年末の2.26%。3%前後から大きく外れたことがほとんどありません

これは株価が動かない代わりに、配当が着実に増えているからです。株価が上がれば利回りは下がりますが、翌年には配当が増えて戻ってくる。その繰り返しで3%前後に張りついています。

ニチアスは1.90%コマツは2.52%。株価が伸びた銘柄ほど、今の利回りは低くなっています。NTTはその逆で、いつ買っても3%前後がもらえる銘柄でした。

予想PER(株価収益率)
14.39倍
過去のPERレンジ7.7〜16.4倍
類似企業PERKDDI15.5倍・ソフトバンク20.7倍
減配実績直近16期なし
PBR(株価純資産倍率)
1.43倍
自己資本比率20.8%
ROE(27/3期予想)9.94%
還元方針継続的な増配・自己株式取得
2026年9月3日終値・2026年6月末(第1四半期)実績ベース。数字は分割後

私がこの株を持ち続ける理由

値上がりを期待して買っていないから

含み益10%は、正面から見れば物足りない数字です。

ただ、この銘柄を買った理由は値上がりではありませんでした。配当で月20万円という目標に対して、減らない配当を積む枠として買っています。

株価が動かないことは、その目的にとっては問題になりません。

16期連続で増配しているから

配当が止まらないというのは、それだけで珍しいことです。

会社の方針には数値の約束がありませんが、16年の実績のほうが約束より雄弁だと思っています。大和ハウスの記事でも同じことを書きました。

NISAで持っているから

この銘柄はNISA口座で持っています。配当に税金がかからないので、3.44%がそのまま入ってきます。

課税口座なら手取りは2.7%台。同じ株でも、置き場所で0.7ポイント変わる。株価が動かない銘柄ほど、この差は効いてきます。

リスクと注意点

  • 自己資本比率20.8%。2026年3月期に総資産と有利子負債が大きく増えました。金利上昇局面では利払いが重くなります
  • 利益率が落ちている。営業利益率は14%台から11.35%(今期予想)へ。ROEも10%を割り込む見込みです
  • EPSは3年前がピーク。今期予想12.04円は2024年3月期の15.09円を2割下回ります
  • 増配の幅が小さい。ここ数年は年0.1円の増配です。利益が伸びなければ、いずれ止まる可能性はあります
  • 株価が動かない。値上がり益を狙う銘柄ではありません。私の含み益も10%止まりです

売らない。買い増しも、たぶんする

これまでの記事は「売らない。でも今は買えない」で終わることが多かったのですが、この銘柄は違います。

利回り3.12%は過去9年の平均とほぼ同じ。PERは14.39倍で、KDDIの15.2倍やソフトバンクの20.7倍より低い。割高な水準ではありません。

株価が上がらないことを不満に思う気持ちは、もちろんあります。含み益10%の銘柄を人に紹介するのは、少し気恥ずかしい。

それでも、配当を積むという目的にはいちばん合っている銘柄です。値動きで楽しませてくれる株はほかに持っているので、この1本は静かに配当を出し続けてくれればいい。

「使いきれない」世界の記事で、資産のピークをいつにするかという話を書きました。その計算の土台になるのは、値上がり益ではなく配当です。NTTはその土台のほうに置いている銘柄になります。

まとめ

項目評価
私の簿価利回り(3.44%)○(NISAなので非課税)
現在の利回り(3.12%)○(過去9年平均3.13%とほぼ同じ)
配当実績(10年で2.25倍・16期連続増配)
還元方針(継続的な増配・自己株式取得5.9兆円)○(数値の約束はない)
収益力(営業利益率14%台→11.35%予想)△(利益率は低下傾向)
財務(自己資本比率20.8%)×(有利子負債16.9兆円)
株価水準(PER14.39倍・PBR1.43倍)○(同業より低い)
ポートフォリオでの役割値上がりではなく、減らない配当を積む枠

株価3.6倍の銘柄を紹介した次に、含み益10%の銘柄を書くことになりました。

並べてみると、自分のポートフォリオの性格がよく分かります。値上がりした銘柄は買値が良かっただけで、今から同じことはできません。NTTのほうは、今から買っても同じ利回りがもらえる

高配当株のブログとしては、後者のほうが読んでいる方の役に立つ気がしています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

⚠ 注意点
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年9月3日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
2023年7月1日に1株を25株とする株式分割が行われています。記事中の株価・1株配当・EPS・BPSは、過去の分もすべて分割後に換算した数字です。
・直近の四半期決算は2026年8月6日に発表済みで、次回は11月上旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・継続的な増配は会社が掲げる基本方針であり、将来の配当を保証するものではありません。累進配当やDOEのような数値の約束は置かれていません。
自己資本比率20.8%は、通信インフラを持つ会社としても低い水準です。2026年3月期に総資産と有利子負債が大きく増えた結果で、金利が上がる局面では利払いの負担が重くなります。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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