【FIRE準備】失われた30年を、給与と株価から振り返る

早期退職準備コラム No.35 FIRE準備

基本給が、1年で数千円しか上がらない。

それを知ったとき、私は愕然としました。今までの働きは何だったのか、と思いました。

木の枠の砂時計と、うしろに積まれた本
イメージ写真(Photo by Mike on Pexels)

「失われた30年」という言葉には、決まった始まりと終わりがないようです。財務省の「平成財政史」では、1991年2月に景気がピークを迎え、その後、長引く景気低迷に入ったと説明されています。

この記事では、バブル崩壊後の1990年代から長く続いた経済の停滞を指す言葉として使います。給与・物価・株価は、それぞれ集計した期間を書いておきます。

前半は暮らし、後半は投資の話です。

平均給与は、長く伸び悩んだ

国税庁の「民間給与実態統計調査」で、1年を通じて勤めた人の平均給与(額面)を見ました。

年分平均給与位置づけ
1997年467.3万円当時のピーク
2009年405.9万円1997〜2025年で最低
2024年477.5万円1997年を初めて上回る
2025年486.6万円過去最高
国税庁「民間給与実態統計調査」。1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与(額面)。2022年分の調査から推計方法が変わり、2014〜2021年分も新しい方法で計算し直されています。1997年との比較は目安です。

1997年の467.3万円を上回ったのは、2024年分でした。27年かかっています。

2025年分は486.6万円で、前の年より1.9%増えました。ここ数年、額面の給与ははっきり増えています。1997年と比べると4.1%増です。

物価を考えに入れると、見え方が変わります。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の実質賃金指数(現金給与総額、事業所規模5人以上、2020年=100)は、1990年以降では1996年の116.5がいちばん高く、2025年は98.0でした。公表された指数を単純に比べると、2025年は1996年より16%ほど低い水準です。ただし、長い期間の比較には、働く人の構成や推計方法の変化も含まれます。

2つの統計は、調べ方も対象も違います。同じ物差しとして並べることはできません。それでも、額面の平均給与はようやく30年前を超え、物価で割り戻した賃金はまだ30年前に届いていない。2つを順に見ると、そういう姿が浮かびます。

物価は上がりにくく、低い金利が長く続いた

給与が伸び悩んだあいだ、物価も上がりにくい状態が続きました。

消費者物価指数(2020年基準、生鮮食品を除く総合)は、1998年から2012年までの15年のうち、10年で前の年を下回っています。

日銀は1999年にゼロ金利政策を始め、2001年には量的緩和に進みました。2016年2月からはマイナス金利も加わり、2024年3月に解除されるまで続きました。

預金の利息も、ほとんどつかなくなりました。日銀が集計している普通預金の店頭表示金利(平均)は、2016年10月から2024年2月まで、おおむね0.001〜0.002%という低い水準でした。

年0.001%なら、100万円を1年預けて、利息は税引前で10円です。

物価が上がらない世界しか知らなかったことは、以前「1億円は20年後に6,730万円分」の記事に書きました。今は物価も金利も動き出していて、その話は「金利のある世界」の記事で取り上げています。

低い金利は、景気の弱さへの対応でもありました。どちらが原因でどちらが結果なのか、私には決めきれません。

私が安定を求めて公務員を選んだ理由

私が就職した頃は、厳しい雰囲気でした。公務員は人気があり、安定を求める空気があった。当時の私は、そう感じていました。

私が公務員を選んだ理由は、安定です。

そして、基本給が1年で数千円しか上がらないことを知りました。冒頭に書いたとおり、愕然としました。

ただ、この数千円を、前の節の平均給与と結びつけるつもりはありません。国税庁の数字は民間の給与所得者の平均で、公務員は入っていませんし、同じ人を30年追いかけた数字でもないからです。

統計上の平均給与と、私自身の基本給の上がり幅は、別のものです。

日経平均が、1989年の高値を超えるまで34年かかった

日経平均株価の1989年から2026年11月までの推移。1989年12月29日の38,915.87円から、2009年3月10日に7,054.98円まで下がり、2024年2月22日に39,098.68円で1989年の高値を超えた。2026年6月25日に終値の最高値72,366.34円をつけ、2026年11月6日は57,434.77円
日経平均株価の日次の終値。配当を含まない指数です。主要な日付と値は本文に書いています。出典:©日本経済新聞社(2026年10月28日までは米国セントルイス連銀のFRED、それ以降はYahoo!ファイナンスで取得)

日経平均株価は、1989年12月29日に38,915.87円をつけました。

そこから下がり、2009年3月10日には7,054.98円。高値から8割以上下がっています。

1989年の高値を終値で初めて上回ったのは、2024年2月22日の39,098.68円でした。34年あまりかかっています。

その後の動きは急で、2024年3月4日に4万円台、2025年10月27日に5万円台に乗りました。2026年6月25日には、終値で過去最高の72,366.34円をつけました。その後は下がり、2026年11月6日は1日で5.96%下がって、終値は57,434.77円でした。この最高値から2割あまり低い水準です。

ただし、日経平均は配当を含まない株価の指数です。配当を受け取り、それを再投資していれば、成績はこの線より上にきます。いつ買ったか、まとめて買ったか少しずつ買ったかでも、結果は変わります。

だから「日本株を持った人は、34年間ずっと損をしていた」という話ではありません。

それでも、1つの国を代表する株価指数が、高値を取り戻すまでに30年以上かかった例があります。

私が積み立てるS&P500と、1つの国への集中

夕暮れの東京の街並みと、明かりのついた東京タワー
イメージ写真(Photo by MB Productions on Pexels)

私が積み立てているのは、S&P500のインデックスファンドです。

S&P500への投資は、国という単位で見ると米国に集中します。米国の株価も、長い間伸び悩む可能性がないとは言い切れません。

複数の国に分けて投資する指数には、例えばMSCI ACWIがあります。日本を含む先進国と新興国の株式で構成され、組み入れ比率は主に時価総額に応じて決まります。

日本・米国・全世界の株の成績を比べるには、期間や配当、通貨の条件をそろえる必要があります。この記事では、そこまでの比較は扱いません。

市場に勝とうとしない考え方は、『敗者のゲーム』の記事に書きました。

株主優待への興味から始まった投資と、今の考え

株に興味を持ったきっかけは、父がやっていた株主優待でした。

インデックス投資を始めたのは2018年、高配当株は2020年からです。

株は今、S&P500の積み立てと、高配当株の2本立てです。

まとめ

国税庁の平均給与は、1997年の467.3万円を2024年分で初めて上回り、2025年分は486.6万円でした。一方で、厚生労働省の実質賃金指数は、1996年の116.5から2025年の98.0まで下がっています。

物価は上がりにくく、普通預金の金利はおおむね0.001〜0.002%という低い水準が長く続きました。

日経平均は、1989年末の高値を超えるまでに34年あまりかかりました。配当を含まない株価の指数での話です。

私は安定を求めて公務員を選び、基本給が1年で数千円しか上がらないことに愕然としました。

民間の平均給与も日経平均も、過去の水準を上回るまでに長い時間がかかりました。今は、現金と株を基本に、資産の持ち方をできるだけシンプルにしたいと考えています。

出典

※平均給与は額面(税金や社会保険料を引く前)です。実質賃金指数は、従業員5人以上の事業所の現金給与総額を、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で割ったものです。日経平均は配当を含まない株価の指数で、著作権は日本経済新聞社に帰属します。普通預金の店頭表示金利は、2022年4月分から週次が月次になり、調査対象も変わりました。日経平均は2026年11月6日の終値まで、そのほかの数字は2026年10月29日時点で確認しました。

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