【FIRE準備】人はなぜ長期投資できないのか。平均保有2.78年

FIRE準備

「長期投資」という言葉は、たぶん投資の世界でいちばんよく使われています。

そして、いちばん守られていない言葉でもあるようです。

日本の投資信託の平均保有期間を調べてみました。2.78年でした。

しかもこれ、過去10年でいちばん長い数字なんです。

「長期投資」の平均は、3年もたなかった

QUICK資産運用研究所が、購入から解約までの期間を全ファンドで平均しています。2025年末の時点で2.78年。10年前は2年ほどでしたから、伸びてはいます。新NISAが効いた、という見方が一般的なようです。

ただ、私が引っかかったのは伸びたことのほうではありませんでした。

過去10年でいちばん長くて、それでも3年に届かない。ここです。

積立の話をするとき、私たちはだいたい20年とか30年を前提に計算しますよね。年率5%で20年ならいくら、みたいな話です。ところが実際の平均は、その10分の1くらいのところで終わっている。

計算しているものと、やっていることが、かなりずれています。

もっとも「解約」には乗り換えも含まれます。もっといい商品を見つけて移した人も、この数字のなかでは3年で降りた人と同じ扱いです。2.78年をそのまま「飽きっぽさ」と読むのは、少し乱暴かもしれません。

同じ商品を持っていたのに、成績が違う

もう少し、いやな数字を紹介します。

ファンドそのものの年率リターン9.9%に対し、投資家が実際に得たのは8.7%だったことを示す棒グラフ

アメリカの調査会社モーニングスターが、毎年「Mind the Gap」というレポートを出しています。ファンドそのものの成績と、そのファンドを買った投資家が実際に得た成績を、分けて計算したものです。

2025年12月までの10年間で、ファンドの成績は年率9.9%でした。

同じ期間に投資家が手にしたのは、8.7%。

差は1.2ポイントです。10年分に直すと、得られたはずのリターンの12%ほどを取り逃したことになります。

商品が悪かったわけではありません。同じものを持っていたのに、売買のタイミングだけで目減りしている。

この数え方には、計算の前提がおかしいという反論も研究者から出ています。数字の大きさのほうは、割り引いて読んだほうがよさそうです。ただ、差が出る向きはどの年も同じでした。投資家のほうが、いつも下にいます。

売らせているのは、たぶん「損の重さ」

では、なぜ売買してしまうのか。

株価アプリの画面が下落を示す赤で埋まったスマートフォン
Photo by StockRadars Co., on Pexels

行動経済学に、よく知られた実験があります。トベルスキーとカーネマンが1992年に出した数字で、同じ額でも、損したときの痛みは得したときのうれしさのおよそ2.25倍になる、というものです。

1万円もうけたうれしさより、1万円損した痛みのほうが倍以上重い。

これは私にも覚えがあります。

株価が3割上がった日のことは、覚えていません。3割下がった日のことは、なぜかその日どこにいたかまで覚えているんですよね。

やっかいなのは、この2.25倍が、画面を見た回数だけ効いてくることでした。

毎日見れば、下がった日は年に百回以上あります。年に一度しか見なければ、下がった年は数年に一度です。同じものを同じだけ持っていても、痛みの総量がまるで違う。長期投資が続かない理由は、意志の弱さというより見る回数の多さのほうにあるのではないかと考えています。

余談ですが、私は証券会社のアプリの通知をずっと切っています。立派な理由があったわけではなく、通知音が嫌いだっただけです。あとになって、これがいちばん効いていたのかもしれないと思いました。

5年と20年で、絵の形が変わる

金融庁が、こんな計算を出しています。

保有5年は年率マイナス8%からプラス14%、保有20年はプラス2%から8%に収まることを示す横棒グラフ

1985年以降、国内外の株式と債券に毎月同額ずつ積み立てた場合の成績です。保有5年だと、年率マイナス8%からプラス14%まで散らばりました。100万円が72万円になった人もいれば、173万円になった人もいる。

ところが保有20年にすると、この幅がプラス2%から8%に縮みます。

マイナスの側が、消えます

100万円は185万円から321万円のあいだに落ち着きました。いちばん悪かった結果でも、元本は下回っていません。

草原のなかを地平線までまっすぐ伸びる道路
Photo by Mohan Nannapaneni on Pexels

ただし、これは1985年からの日本と世界の話です。この先も同じ形になる保証はどこにもありません。資料が作られたのが2017年なので、そもそも今の相場は入っていない。

それでも、2枚の絵の形の違いは頭に残りました。

5年で降りると、運の悪い側に立つ可能性が残ります。20年持つと、その可能性が薄くなっていく。

つまり長期投資は、うまくやる技術ではなく、降りない技術なんですね。

私が降りずに済んでいるのは、意志が強いからではない

私自身は、一度降りています。

2011年の震災の暴落で、持っていた優待株を売りました。その話はなぜ日本人は投資をしないのかという記事に書きました。

あのときの自分に足りなかったのは、根性ではなかったと思っています。

売らずに済ませる仕組みが、何もなかった。

今は、積立の部分は毎月自動で買われます。iDeCoにいたっては、そもそも引き出せません。下がった月も、私の気分と関係なく買われている。

夕日を受けて砂浜に寄せる波
Photo by Kata Tsumuri on Pexels

続いているのは、私が判断していないからです。

判断する回数を減らすと、間違える回数も減ります。意志の話ではなく、設計の話でした。市場に勝とうとするのをやめた話を書いたときも、結局は同じところに落ちています。

まだ試されていないところ

とはいえ、私の口座には自動ではない部分もあります。

高配当株のほうは、自分で選んで自分で買っています。ここは仕組みに守られていません。

今のところ持ち続けられているのは、たぶん配当が毎月入ってくるからです。株価が下がっても配当は同じように振り込まれるので、見るものが株価だけにならない。

ただ、これも試験を受けたわけではありませんでした。

私がこれまで投資してきた期間の相場は、コロナショックを除けばおおむね上向きです。何年も続く下げ相場を、この形でくぐったことはまだありません。暴落対策を書いてはいますが、書いたことと、そのときできることは別ものです。

そして、先に控えている試験がもうひとつあります。FIREしたあとは、買う側から取り崩す側に回ります。毎月機械的に売っていく生活で、下げ相場に入ったときに手が止まらないかどうか。取り崩しの戦略は決めてありますけれど、たぶんそこがいちばんの正念場です。

まとめ

  • 日本の投資信託の平均保有期間は2.78年(2025年末)。過去10年で最長で、この水準
  • ファンドの成績は年率9.9%、投資家が実際に得たのは8.7%。売買のタイミングで1.2ポイント目減りした
  • 損の痛みは得のうれしさのおよそ2.25倍。画面を見る回数だけ、この痛みは積み上がる
  • 金融庁の試算では、保有5年だとマイナスが残り、20年だとマイナスが消えた
  • 長期投資は、うまくやる技術ではなく降りない技術

人はなぜ長期投資できないのか。

調べてみて、答えは「気が短いから」ではないような気がしてきました。

持っているあいだ、ずっと売れてしまうからです。

家や保険は、値下がりしたからといって翌日に手放せません。株と投資信託だけが、思い立った日に降りられる。降りられる自由がある分、降りない仕組みのほうを自分で用意しないといけないのだと思います。

私の場合、それは自動積立と、通知を切ったスマホでした。

たいした話ではありませんね。それでも、意志で持ちこたえようとしていた頃より、ずっとうまくいっています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

出典

  • QUICK資産運用研究所の集計(投資信託の平均保有期間、2025年末時点)
  • Morningstar「Mind the Gap 2026」(2025年12月までの10年間、米国の投資信託・ETFの平均)
  • Tversky & Kahneman(1992)累積プロスペクト理論。損失回避係数の中央値2.25
  • 金融庁「つみたてNISAについて」(2017年7月)

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