配当が、いきなり44円から70円になりました。
住友精化(証券コード:4008)。紙おむつに使われる高吸水性樹脂の会社です。
2026年8月6日、会社は今期の配当予想を48円から70円へ引き上げました。同じ日に、配当の決め方そのものも変えています。
株価は、その翌日までに2割上がりました。
私はこの株を以前から持っていて、簿価利回りは7.91%になりました。
何が起きたのかを、順番に書きます。

基本データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 証券コード | 4008 |
| 企業名 | 住友精化株式会社 |
| 業種 | 化学(高吸水性樹脂・精密化学品) |
| 株価 | 1,491円 |
| 時価総額 | 約964億円 |
| 配当利回り(予想) | 4.69%(70円) |
| PER(会社予想) | 12.0倍 |
| PBR(実績) | 0.91倍 |
| EPS(予想) | 124.46円 |
| BPS(実績) | 1,636.1円 |
| 自己資本比率 | 65.8% |
| 決算期 | 3月 |
| 私の平均取得単価 | 885円(簿価利回り7.91%) |
株価・配当・EPS・BPSは、2026年4月の株式分割(1株→5株)のあとの数字にそろえています。
売上の8割が、紙おむつの中身
事業は、実質2本です。
| セグメント | 売上(26/3期) | 売上比率 | 主な中身 |
|---|---|---|---|
| 吸水性樹脂 | 1,161億円 | 78% | 紙おむつなどに使う高吸水性樹脂。水を吸って固める素材 |
| 機能マテリアル | 319億円 | 22% | 精密化学品、半導体向けのガスなど |
| その他 | 2.9億円 | 0% | - |
※2026年3月期の実績。比率は小数点以下を四捨五入。
紙おむつを開けると、白い粉のような粒が入っています。あれが高吸水性樹脂です。自分の重さの何十倍もの水を吸って、ゼリー状に固める。この会社の売上の8割が、その素材です。
原料はアクリル酸で、もとをたどれば石油(ナフサ)です。会社が中期経営計画で置いている前提にも「ナフサ1キロリットルあたり70,000円」という数字が入っています。原油と為替に影響される商売だ、ということです。

もう一方の機能マテリアルは、精密化学品や半導体向けのガスです。売上は319億円と小さいのですが、こちらは2023年3月期の372億円から319億円へ減っています。
いま伸びているのは、吸水性樹脂のほうです。2022年3月期に3.1%だった営業利益率が、2026年3月期は9.9%まで戻りました。
配当は10年で4.67倍。減配は一度もない

2017年3月期の15円から、2027年3月期予想の70円へ。10年で4.67倍です。
しかも、この10年で1円も減らしていません。20円が5年続いた時期はありますが、下げてはいない。
そして今期、44円から70円へ一気に増えました。59%増です。
これは業績が59%良くなったからではありません。配当の決め方が変わったからです。
2026年8月6日に、配当の決め方が変わった
同じ日に、3つの発表がありました。
| 発表内容 | 中身 |
|---|---|
| DOE4.5%以上を方針に追加 | 従来の「配当性向30%以上」に加えて、株主資本の4.5%以上を配るという基準を新設 |
| 自己資本比率の管理範囲を50〜60%に設定 | 2026年6月末は65.8%。自己資本が厚すぎると会社自身が認めた |
| 2030年度にROE10%・ROIC8.5% | 新しい中期経営計画の骨子。詳細は2026年11月に公表予定 |
DOEというのは、株主資本配当率のことです。利益ではなく、会社に積み上がった株主資本を基準に配当を決める考え方です。
配当性向だけだと、利益が落ちた年は配当も落ちます。DOEなら、資本が減らないかぎり配当は下がりにくい。配当に下限ができるということです。
同じ考え方は稲畑産業(DOE4〜4.5%)でも書きました。最近この方針を取り入れる会社が増えています。
今期の70円は、前期末の株主資本879億円に対しておよそ5%にあたります。方針の4.5%を上回る水準です。
そして、いちばん目を引いたのが2つ目でした。
自己資本比率65.8%を、50〜60%まで下げると会社が言っています。厚すぎる資本を、成長投資と株主還元に回すという宣言です。
株価が数日で2割上がったのは、業績ではなくこの発表への反応でした。
売上は10年で1.7倍。利益率は下がってきた

売上は989億円から1,650億円(今期予想)へ、10年で1.67倍。とくに2023年3月期に1,430億円へ跳ねています。
気になるのは下の折れ線です。営業利益率は2017年3月期の10.66%から下がり、6〜7%台が続きました。2026年3月期に9.75%まで戻したところですが、今期の会社予想は6.67%。また下がる想定です。
売上は増えるのに、本業のもうけは減る。今期はそういう予想になっています。

ROEは今期予想7.59%。合格ラインとされる8%には届いていません。
2019年3月期の0.95%が目を引きます。この年、会社は減損損失や関係会社株式の評価損などの特別損失を計上し、繰延税金資産も取り崩しました。経常利益は86億円あったのに、最終利益は6億円まで落ちています。
会社が2030年度にROE10%を掲げたのは、この水準を上げにいくという話です。分母である自己資本を減らす(=還元を増やす)のも、その手段のひとつになります。
EPSは伸びていない。配当性向は56%へ

EPSは2017年3月期の83.2円から、今期予想124.5円へ。10年で1.5倍です。配当が4.67倍になったのと比べると、利益の伸び以上に配当を増やしてきたことになります。
その結果が、今期の配当性向56.2%です。20%台だった時期から見れば、かなり上がりました。
下のグラフで2019年3月期だけ228%まで跳ねているのが、さきほどの特別損失の年です。利益がほぼ消えても20円を維持しました。
56%という水準は、余裕たっぷりとは言えません。ただ、DOEが入ったことで「利益が落ちたら配当性向が上がるのを受け入れる」という設計に変わった、とも読めます。
直近の決算は、大幅な増益だった
2026年8月6日に、2027年3月期の第1四半期(4〜6月)決算が発表されました。
売上高403億円(前年同期比13.6%増)、営業利益34.5億円(同47.5%増)、経常利益43.1億円(同168.5%増)、最終利益32.6億円(同212.2%増)。数字だけ見れば文句のない決算です。
経常利益の伸びが突出しているのは、前年の同じ時期に営業外の損益が7億円のマイナスだったからです。今期は逆に8億円のプラスになっています。営業外が年によって大きく振れる会社です。
最終利益32.6億円は、通期予想80億円に対して41%の進捗です。
それでも会社は、通期の営業利益を110億円(前期比24%減)のままにしています。1Qが47%の増益なのに、通期は減益予想。この差の理由までは、決算短信からは読み取れませんでした。11月の中期経営計画で説明があるのかもしれません。
株価は、10年でいちばん高い

この10年の値動きです。
2017年から2018年にかけて1,200円台まで上がったあと、2019年に急落しています。特別損失を出した年です。2020年3月には531円台まで下げました。
そこからは600〜1,000円台を長く行き来しています。2022年から2025年にかけては、ほとんど横ばいでした。
動いたのは2026年です。2月に1,400円台へ跳ね、いったん1,200円前後まで戻したあと、8月6日の発表をはさんで、8月5日の1,259円から8月7日の1,542円へ。8月末の1,522円は、月末終値でみるとこの10年でいちばん高い水準です。そこからは少し戻して、今は1,491円です。
配当が増えたのは良いことですが、株価もそれ以上に動いたということでもあります。
配当利回りの推移と、今の位置

現在の利回りは4.69%です。過去10年の平均は3.24%なので、平均をはっきり上回っています。
いちばん高かったのは2023年3月期末の4.62%でした。配当を24円から40円へ67%増やした年です。株価も4割上がりましたが、配当の伸びのほうが大きかった。
今回も似た形になっています。株価は2割上がりましたが、配当が59%増えたので、利回りは下がるどころか上がった。
PERレンジの上限148.9倍というのは、2019年3月期に利益がほぼ消えたときの数字です。実質的なレンジはもっと狭いと考えたほうが良いと思います。
PBRは0.91倍。1倍を割っています。会社が資本効率の改善を掲げた背景には、この数字もあります。
私がこの株を持ち続ける理由
簿価利回りが7.91%になったから
885円で買って、今期は70円を受け取ります。7.91%です。
今の株価1,491円で買うと4.69%。同じ利回りを作り直すには、株価が900円近くまで戻る必要があります。
配当に下限ができたから
DOE4.5%以上が入ったことで、利益が落ちた年でも配当が急に半分になる可能性は下がりました。
これはコマツの記事で書いた「累進配当」とは違います。累進配当は前の年より減らさないという約束ですが、DOEは資本が減れば配当も減ります。それでも、利益だけを見て配当を決めるよりは読みやすい。
会社が自分の弱点を認めたから
「自己資本の比率が高く、あるべき自己資本の水準の検討と資本規律の確保が急務」。これは会社自身が開示文書に書いた言葉です。
PBRが1倍を割っている会社が、その理由を自分で言語化して、数値目標まで置いた。これは持ち続ける材料になると思っています。
リスクと注意点
- 今期の営業利益は24%の減益予想。1Qが47%増益なのに通期は減益という、説明のつかない差があります
- 売上の8割が高吸水性樹脂の一本足。世界トップは日本触媒で、価格競争のある商品です
- 原料はナフサ。原油と為替に振られます。中期経営計画も1ドル155円・ナフサ7万円という前提の上に立っています
- DOEは累進配当ではありません。株主資本が減れば配当も減ります
- 株価は10年来の高値圏。8月6日の発表後、数日で2割上がったあとの水準です
- 特別損失で最終利益が消えた前科があります(2019年3月期)
- 中期経営計画は「骨子」の段階。詳細は2026年11月に公表予定で、まだ全体像は見えていません
売らない。買い増しは11月まで待つ
簿価利回り7.91%を手放す理由はないので、売りません。
買い増しは、しばらく見送ります。理由は2つです。
ひとつは、株価が10年来の高値まで来ていること。利回り4.69%は魅力的ですが、それは配当が59%増えたからで、株価が安いからではありません。
もうひとつは、中期経営計画がまだ骨子だけだからです。2030年度に売上2,000億円・ROE10%という数字は出ましたが、どうやってそこへ行くのかは11月に出ます。その中身を読んでから判断しても遅くないと思っています。
配当を月20万円まで増やす計画から見ると、利回り4%台後半の銘柄は貴重です。ただ、あわてて買う理由もありません。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 私の簿価利回り(7.91%) | ◎ |
| 現在の利回り(4.69%) | ○(過去10年平均3.24%を上回る) |
| 配当実績(10年で4.67倍・減配なし) | ◎ |
| 還元方針(配当性向30%以上+DOE4.5%以上) | ◎(2026年8月に強化) |
| 収益力(今期の営業利益率6.67%予想・ROE7.59%予想) | △(8%に届かない) |
| 財務(自己資本比率65.8%・厚すぎるほど) | ◎ |
| 株価水準(PER12.0倍・PBR0.91倍) | △(PBRは1倍割れだが、株価は10年来の高値) |
| ポートフォリオでの役割 | 化学セクターの高配当枠 |
配当が44円から70円になった、という話だけを読むと、すごく良い会社に見えます。
実際には、今期の本業のもうけは減る予想です。ROEも8%に届いていません。増えたのは配当の決め方が変わったからで、会社が急に強くなったわけではありません。
それでも私がこの発表を評価しているのは、会社が「資本が余っている」と自分で認めて、数字にしたからです。日本の高配当株にいま起きているのは、だいたいこの種類の変化だと思っています。
11月に中期経営計画の中身が出ます。そのときに、もう一度この記事を更新するつもりです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年9月7日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
・2026年4月1日に1株を5株とする株式分割が行われています。記事中の株価・1株配当・EPS・BPSは、過去の分もすべて分割後に換算した数字です。
・直近の四半期決算は2026年8月6日に発表済みで、次回は11月上旬の予定です。新しい中期経営計画の詳細も11月に公表されます。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・今期の営業利益は前期比24%の減益予想です。最終利益は増益予想ですが、本業のもうけは落ちる想定になっています。
・DOE4.5%以上は会社の方針であり、将来の配当を保証するものではありません。累進配当(前の年より減らさない)を約束した会社ではありません。
・株価は月末終値でみて直近10年の高値圏です。2026年8月6日の発表を受けて数日で2割上がりました。過去と比べて安い水準ではありません。
・2019年3月期には、特別損失などで最終利益が6億円まで落ち込んだ年があります。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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