「富裕層」という言葉には、はっきりした線が引かれています。
線を引いているのは野村総合研究所。調査とコンサルティングを手がける会社で、ここが2005年から2年おきに、日本の世帯を純金融資産の額で5つに分けた推計を発表しています。長いので、以下NRIと書きます。
この調査がありがたいのは、20年分が同じ物差しで並んでいることです。基準がころころ変わると「増えた」「減った」が比べられませんが、これなら前回との差がそのまま読めます。
最新版は2025年2月に発表されたもので、2023年時点の数字です。以前の記事では階層の区分だけを表にしましたが、今回は世帯数まで見てみます。数字を並べてみたら、思っていたのと違う景色が出てきました。

5つの階層と、その中身

※野村総合研究所が2025年2月13日に発表した数値をもとに、筆者が作図しました。同社の図表そのものではありません。
ここでいう純金融資産は、預貯金・株式・債券・投資信託・一時払い生命保険や年金保険などを合計して、負債を引いた金額です。持ち家などの不動産は入っていません。住宅ローンだけが負債として引かれるので、家を買った直後の世帯は下の階層に出やすい作りになっています。
1億円以上は、100世帯のうち3世帯
5つを足すと5,570.4万世帯。ここから割合を出すと、こうなります。
- 1億円以上(富裕層+超富裕層)……165.3万世帯。全体の3.0%で、約34世帯に1世帯
- 5,000万円以上(準富裕層から上)……569.2万世帯。全体の10.2%で、約10世帯に1世帯
- 3,000万円以上(アッパーマス層から上)……1,145.7万世帯。全体の20.6%で、約5世帯に1世帯
1億円というのは、100世帯のうち3世帯のラインということになります。遠い数字ではありますが、手が届かない場所というほどでもない。私が1億円をゴールに置いているのは、このあたりの感覚もあります。
2年で減ったのは、アッパーマス層だけでした
おもしろいのは、前回推計(2021年)からの動きです。
| 階層 | 2021年 | 2023年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 超富裕層 | 9.0万世帯 | 11.8万世帯 | +2.8万 |
| 富裕層 | 139.5万世帯 | 153.5万世帯 | +14.0万 |
| 準富裕層 | 325.4万世帯 | 403.9万世帯 | +78.5万 |
| アッパーマス層 | 726.3万世帯 | 576.5万世帯 | −149.8万 |
| マス層 | 4,213.2万世帯 | 4,424.7万世帯 | +211.5万 |
5つの階層のうち、世帯数が減ったのはアッパーマス層だけです。約150万世帯が消えています。その一方で、準富裕層は78.5万世帯増えました。
NRIはこの動きを、株式や投資信託などの資産価値の上昇によるものと説明しています。とくに2023年は株価の急騰と円安の進行が重なった年でした。

NRIはそれを「いつの間にか富裕層」と呼びました
今回の発表で、NRIは新しい呼び名をひとつ作っています。
株式相場の上昇で運用資産が急増し、そのまま富裕層になった層のことを「いつの間にか富裕層」と名づけました。職業としては主に一般の会社員で、従業員持株会・確定拠出年金・NISA枠を使っているうちに運用資産が1億円を超えた、というケースが多いとのことです。
富裕層以上の世帯のうち、1〜2割程度がこれにあたると推察されています。しかも給与収入の範囲内で生活しており、生活スタイルは前と変わっていない。
これは、私の形とほとんど同じです
2026年8月末の総資産は6,387万円でした。前月末から116万円増えて、4か月連続で過去最高値です。
ただ、この116万円のうち、自分で入金した分はごく一部です。残りは持っている投資信託と株が値上がりしただけ。階層を押し上げているのは、私ではなく相場のほうです。
積み立てを続けたことも、高配当株を買い集めたことも、自分でやったことではあります。それでも、この2年で準富裕層が78.5万世帯も増えたという事実の前では、自分の努力を大きく見積もるのは危ないと感じます。上がった相場は、下がることもあるので。
NRIが心配しているのは、そこから先です
発表資料には、「いつの間にか富裕層」の危うさについても書かれていました。従来の富裕層に比べて金融知識が十分ではなく、商品の特性やリスクを理解しないまま金融商品を買ってしまう可能性がある、という指摘です。
運用を金融機関の担当者や親族・知人の勧めに任せて、自分では関与していない人も一定数いる、とも書かれています。
増え方が急だと、増えた理由を自分で説明できないまま金額だけが大きくなります。資産額は、理解が追いつくのを待ってくれません。私が毎月の資産公開を続けているのは、この順番を逆にしないためでもあります。
だから私は、階層より配当を見ています
階層は相場で動きます。上にも動きますし、下にも動きます。2年で150万世帯が入れ替わるくらいには動きます。
その点、配当は相場が下げても同じ額が振り込まれます。株価が3割下がっても、減配がなければ配当は変わらない。私が数えたいのは、階層ではなく振り込まれる額のほうです。
1億円は通過点であって、それ自体が目的ではありません。むしろ到達したあとに使えるかどうかのほうが、私にとっては難しい問題です。
ひとつ、過去の記事を訂正します
資産5,000万円に到達したときの記事で、準富裕層は「日本の世帯のうち約6%」と書きました。当時の推計(2021年)では6.0%でしたから、あの時点では合っています。
ただ最新の推計では、準富裕層は7.3%に増えています。ここも2年で動いた数字です。
まとめ
- NRIの最新推計(2025年2月発表・2023年時点)を見た
- 1億円以上は165.3万世帯で全体の3.0%。約34世帯に1世帯
- 5,000万円以上なら10.2%、3,000万円以上なら20.6%
- 2年で世帯数が減ったのは、アッパーマス層だけ(−149.8万世帯)
- NRIは相場で富裕層になった層を「いつの間にか富裕層」と名づけた
- 私の資産の増え方も、形としては同じ
- 階層は相場で動く。動きにくい配当のほうを見ていきます
ピラミッドの図は、見ていて気持ちのいいものです。ただ、自分がどこにいるかより、なぜそこにいるのかのほうが大事だと思っています。

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