利回り5.00%、PER12.5倍、ROEは17%近く。自己資本比率は78%で、借金はほとんどありません。
この組み合わせは、なかなか見かけません。
アイティフォー(証券コード:4743)。金融機関と自治体にシステムを売っている、時価総額447億円の会社です。
そして私にとっては、少し落ち着かない銘柄でもあります。この会社が売っているものが、私の職場でやっている仕事とつながっているからです。

基本データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 証券コード | 4743 |
| 企業名 | 株式会社アイティフォー |
| 業種 | 情報・通信業(金融・自治体向けシステム) |
| 株価 | 1,600円 |
| 時価総額 | 約447億円 |
| 配当利回り(予想) | 5.00%(80円) |
| PER(会社予想) | 12.5倍 |
| PBR(実績) | 2.11倍 |
| EPS(予想) | 128.48円 |
| BPS(実績) | 757.82円 |
| 自己資本比率 | 78.1% |
| 有利子負債 | 2.39億円(2026年3月末) |
| 決算期 | 3月 |
| 私の平均取得単価 | 1,109円(簿価利回り7.21%) |
役所の督促業務を、代行している会社
この会社を一言でいうと、お金を回収する仕組みを売っている会社なんですね。
金融機関には、延滞債権の管理システムを入れています。返済が滞った先を管理して、督促の記録を残し、回収につなげる。銀行やクレジット会社が使っているものです。
もうひとつが自治体向けで、こちらはシステムを売るだけでなく、業務そのものを引き受けています。税や保険料の催告、納付書の発送、窓口や事務の一部。会社の導入事例には、収納率が上がって職員の負担が減った、という自治体の声が並んでいます。

ここが、私にとって落ち着かないところです。
公務員として働いている人間が、役所の仕事を効率化して手数料を得ている会社の株を持っている。しかもその配当で、いずれ役所を辞めようとしている。
ねじれているといえば、ねじれています。
ただ、悪いことをしている会社ではありません。人が足りない現場に、人手と仕組みを持ち込んで、取りこぼしていた収入を取れるようにしている。行政の側から見れば、ありがたい相手です。この会社が伸びている理由も、たぶんそこにあります。
ほかに小売のキャッシュレス決済、コンタクトセンター、セキュリティも手がけていて、会社は「6つのソリューション」と呼んでいます。ただ、軸足は金融と公共です。
セグメントは2つ。利益はほぼ半々
| セグメント | 売上比率 | 主な中身 |
|---|---|---|
| システム開発・販売 137億円 | 59% | 金融機関の債権管理システム、自治体システム、小売のキャッシュレス決済。営業利益19.6億円 |
| リカーリング 94.3億円 | 41% | 保守・運用と、自治体業務の受託(BPO)。継続的に入ってくる収入。営業利益19.0億円 |
※2026年3月期の実績。比率は小数点以下を四捨五入。
売上の6割はシステム開発・販売です。ところが営業利益で見ると、19.6億円と19.0億円で、ほぼ並んでいます。
リカーリングの利益率が20%と高いからです。
保守や運用の受託は、いちど入ると簡単には切り替えられません。とくに自治体の業務を丸ごと引き受けている場合、他社に替えるのは相当な手間になります。この積み上がりが、業績の下支えになっています。
売上は10年で2.5倍。利益率は17%台まで上がった

売上は2017年3月期の111億円から、今期予想の280億円へ。10年で2.5倍です。
目を引くのは下の折れ線のほうでした。営業利益率が11%台から17%台へ上がっています。売上を伸ばしながら、利益率も上げてきた。この形はあまり多くありません。
ただし今期の売上280億円は、前期比21%増という強気の数字です。理由は次の節に書きます。
ROE17%を、借金なしで出している

ROEは今期予想16.95%。合格ラインとされる8%の倍以上です。
ここで普通なら、借金を増やして自己資本を薄くしているのでは、と疑うところです。ROEは自己資本で割る指標なので、借金が多いほど高く出ます。
この会社は逆でした。自己資本比率78.1%、有利子負債は2.39億円。時価総額447億円の会社で、借金が2億円台です。実質的に無借金といっていい水準ですね。
借金に頼らずROE17%。ここがこの会社のいちばん強いところだと思っています。
会社は中期経営計画「FLY ON 2026」で、2026年度にROE15%・ROIC15%を掲げています。今期はその最終年度にあたり、売上280億円・営業利益48億円という目標がそのまま会社予想になっています。
配当は10年で4.7倍。去年は途中で増やした

2017年3月期の17円から、今期予想の80円へ。10年で4.7倍です。
2010年までさかのぼっても、一度も減らしていません。
そして2026年3月期は、期の途中で増やしました。当初の予想は年60円でしたが、期末に50円を出して年80円へ。予想から33%の上積みです。
今期は中間40円・期末40円の年80円を予想しています。金額は据え置きですが、中間配当が30円から40円に増えました。
「累進配当」を、方針に書き加えた
配当の話でいちばん大きかったのは、金額ではなく方針の変更のほうです。
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| 連結配当性向 50%を目標 | 業績や財務状況を勘案しながら、安定的かつ継続的に配当を行う |
| 総還元性向 70%以上 | 配当と自社株買いを合わせた水準として見込む |
| 累進配当 | 株主還元の強化に対する姿勢を一層明確にするため、配当方針に追加 |
※2026年6月12日提出の有価証券報告書(第67期)「配当政策」より。
累進配当は、前の年より配当を減らさないという約束です。三井物産のような大企業が掲げている例は知っていましたが、時価総額447億円の会社が入れてくるとは思っていませんでした。
住友精化が導入したDOEとは、性格が違います。DOEは株主資本が減れば配当も減りますが、累進配当は金額そのものを下げないという話です。
約束としては、こちらのほうが強い。
配当性向76.7%は、さすがに高い

いいことばかり書いてきたので、気になる数字も出しておきます。
2026年3月期の配当性向は76.7%でした。会社が目標に掲げる50%を、大きく超えています。
理由は上のグラフを見ると分かります。配当を50円から80円へ増やした年に、EPSは108.09円から104.27円へ下がっているんですね。利益が減ったのに配当を増やしたので、比率が跳ねました。
今期はEPSが128.48円まで回復する予想なので、配当性向は62.3%に下がる計算です。それでも目標の50%より上にいます。
累進配当を掲げた以上、この80円は下げられません。EPSが伸びなければ、配当性向は高いまま張りつきます。
直近の決算は、営業利益が28%増えた
2026年8月12日に、2027年3月期の第1四半期(4〜6月)決算が発表されました。
売上高46.2億円(前年同期比9.2%増)、営業利益5.55億円(同28.5%増)。営業利益率は12.0%へ上がっています。
ただし経常利益は5.09億円で3.4%増、最終利益は3.57億円で0.6%増にとどまっています。営業から下では伸びが消えました。
進捗率は、売上が通期予想の16.5%、営業利益が11.6%です。数字だけ見ると遅れていますが、この会社は毎年4Qに売上が集中します。1Qの進捗が低いのは例年どおりで、そこは慌てる場面ではないと考えています。

株価は10年で2.6倍。566円まで落ちた年もある

10年前は600円台でした。
2018年5月に1,288円まで上がったあと、そこから2年かけて下げ続け、2020年3月には566円をつけています。コロナの底です。高値からの下落率は56%でした。
そこからは800円前後で3年ほど動かず、2023年の後半から一段ずつ上がって、2025年末に1,700円台へ。今は1,600円です。
私が買ったのは1,109円のあたりです。当時は今のような会社に見えていませんでした。
配当利回りの推移と、今の位置

現在の利回りは5.00%です。過去10年の平均3.21%を、大きく上回っています。
これまで書いてきた銘柄とは、逆の形になりました。株価が上がったせいで利回りが下がった話ばかりでしたが、この会社は配当の増え方が株価の上がり方を追い越しています。
10年でいちばん高かったのは2020年3月末の4.06%です。今の5.00%は、それを超えました。
PBRは2.11倍です。ここまで紹介してきた銘柄の多くは1倍割れでしたから、この会社は明らかに高い。
ただ、ROEが17%近くある会社のPBRが1倍で放置されることは、普通ありません。PBRとPERは、ROEを挟んでつながっています。2.11÷12.45を計算すると16.95%になって、ROE予想の16.95%と一致します。
PBRが高いのではなく、ROEが高いから、というのが実際のところですね。
私がこの株を持ち続ける理由
今の株価でも、利回りが5%あるから
1,109円で買って、簿価利回りは7.21%になりました。
ここまでは他の銘柄と同じ話です。違うのは、今の1,600円で買っても5.00%あるところ。買値が効いている銘柄ばかり紹介してきたので、この形は久しぶりでした。
累進配当が入ったから
減配しないという約束は、配当で月20万円をつくる計画にとっては、利回りの高さと同じくらい大事です。
計算が崩れるのは、利回りが下がるときではなく、配当そのものが減るときなので。
仕事の隣にある会社だから
これは投資判断としては弱い理由です。
それでも、事業の中身が想像できる会社は持っていて落ち着きます。人が減っていく役所に、外から仕組みを入れて回す。この需要が数年で消えるとは、今のところ思えません。
リスクと注意点
- PBR2.11倍。ここまで紹介した銘柄のなかでは高い水準です
- 配当性向76.7%(26/3期)。累進配当を掲げた以上は下げられないので、EPSが伸びないと苦しくなります
- 今期の売上280億円は前期比21%増という強気の目標。中期経営計画の最終年度で、届かない可能性もあります
- 1Qの進捗は売上16.5%・営業利益11.6%。4Q偏重の会社なので例年どおりですが、2Q以降は確認が要ります
- 顧客が金融機関と自治体に偏っています。どちらも予算の削減が起きれば直撃します
- 時価総額447億円の小型株。売買が薄く、値動きは大きくなりがちです
- 保有は50株、年間の配当は4,000円。私のポートフォリオ全体の0.5%しかありません
売らない。買い増しは2Qの決算を見てから
簿価利回り7.21%を手放す理由はないので、売りません。
買い増しは考えています。今の利回り5.00%は、他の保有銘柄と比べても高いほうですし、累進配当が入ったことで下限も見えるようになりました。
ただ、今期の目標が強気なので、11月の2Q決算を見てからにするつもりです。売上280億円という数字に、上期でどこまで近づけているか。そこを確かめてからでも遅くありません。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 私の簿価利回り(7.21%) | ◎ |
| 現在の利回り(5.00%) | ◎(過去10年平均3.21%を大きく上回る) |
| 配当実績(10年で4.7倍・減配なし) | ◎ |
| 還元方針(配当性向50%目標+累進配当) | ◎(2026年3月期に累進配当を追加) |
| 収益力(営業利益率17%台・ROE16.95%予想) | ◎ |
| 財務(自己資本比率78.1%・実質無借金) | ◎ |
| 配当の余力(配当性向76.7%) | △(目標50%を大きく超えている) |
| 株価水準(PER12.5倍・PBR2.11倍) | △(PERは同業より低いが、PBRは高い) |
| ポートフォリオでの役割 | ディフェンシブ枠の小型株 |
利回り5%、PER12倍、ROE17%、実質無借金、そして累進配当。
並べると出来すぎに見えます。
引っかかるとすれば、配当性向が高いことと、今期の目標が強気なことです。ここが崩れると、5%の利回りは維持できません。
それでも私がこの会社を評価しているのは、儲け方がはっきりしているからです。人手が足りない現場から、面倒な仕事を引き受けて対価をもらう。自分の職場を見ていると、この需要はまだ増える気がしています。
複雑な気持ちではあるのですが。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年9月11日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
・直近の四半期決算は2026年8月12日に発表済みで、次回は11月上旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・配当性向50%目標・総還元性向70%以上・累進配当は会社の方針であり、将来の配当を保証するものではありません。
・2026年3月期の配当性向は76.7%で、会社が目標に掲げる50%を大きく超えています。この水準がそのまま続く前提では考えないでください。
・今期の売上高280億円は前期比21%増の計画です。中期経営計画「FLY ON 2026」の最終年度目標がそのまま会社予想になっており、達成できない可能性があります。
・顧客は金融機関と自治体に偏っています。予算削減や制度変更の影響を受けやすい構造です。
・時価総額447億円の小型株で、売買代金は大型株より少なくなります。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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