【高配当株】武田薬品工業(4502) 赤字の年に増配した会社

高配当銘柄

2026年3月期の武田薬品工業は、1,524億円の最終赤字でした。

その期の配当は、前の年より4円増えて200円。赤字の年に、増配しています。

今回は武田薬品工業(4502)を取り上げます。日本の製薬会社で最大手、時価総額9兆円。私が持っている銘柄のなかでは、群を抜いて大きい会社です。

数字を並べると妙なことになっていて、そこを解いていくと、この会社の配当の考え方が見えてきました。

錠剤が並んだ医薬品のシート
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基本データ

項目数値
証券コード4502
企業名武田薬品工業株式会社
業種医薬品
株価5,847円
時価総額約9兆3,675億円
配当利回り(予想)3.49%(204円)
PER(会社予想)55.65倍
PBR(実績)1.22倍
EPS(予想)105.07円
BPS(実績)4,782.57円
自己資本比率47.9%
決算期3月(IFRS)
私の簿価利回り5.53%
株価・時価総額・PER・PBR・EPS・BPS・自己資本比率は2026年9月15日終値時点(Yahoo!ファイナンス)。予想は2026年5月13日発表の会社計画。

PER55倍の高配当株、という妙な姿

高配当株を探している人が、PER55倍の会社を買うことはあまりありません。利益に対して株価が高すぎるからです。

それなのに利回りは3.49%ある。この2つが同居しているのは、会社が利益よりずっと多い配当を出しているからです。今期の予想EPSは105.07円で、配当は204円。配当性向は194.2%になります。

ここだけ見ると危ない会社に見えます。ただ、武田の数字は表面のEPSでは測れません。

会社が使っているのは「Core EPS」

武田は決算短信で、通常のEPSとは別にCore EPSという指標を出しています。買収でできた無形資産の償却など、事業の実力と関係の薄い項目を除いた数字です。

期EPS(表面)Core EPS配当Core EPSに対する配当性向
2025年3月期68.36円491円196円39.9%
2026年3月期△96.75円517円200円38.7%
2027年3月期(予想)105.07円472円204円43.2%
※Core EPSは2026年3月期決算短信(2026年5月13日)の開示値。27/3期の表面EPSはYahoo!ファイナンスの会社予想。配当性向は筆者が算出。

Core EPSで見ると、配当性向は40%前後です。株価5,847円をCore EPS 472円で割れば、PERは12.4倍。まったく違う会社の姿になります。

どちらが正しいという話ではありません。会社が経営の物差しにしているのはCoreで、配当もそちらを見て決めている、ということです。

2026年3月期の赤字は、5月18日に決まった

法廷の机に置かれた木づち
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ここが今回いちばん驚いたところです。

2026年5月13日に発表された決算短信では、2026年3月期のEPSは+121.75円の黒字でした。赤字ではありません。

その5日後の5月18日、アメリカのマサチューセッツ州の連邦地方裁判所で、AMITIZA(ルビプロストン)という薬をめぐる反トラスト訴訟の陪審評決が出ました。決算期末の時点で存在していた事象にあたるため、会社は6月5日に訂正を出し、2026年3月期の決算を修正しています。

  • 訴訟引当金4,025億円を追加計上(関連する税務便益584億円)
  • その結果、当期利益は1,524億円の赤字に
  • 会社は「本修正は2025年度のCore業績に影響を与えるものではありません」と明記
  • 期末配当100円は変更なし。翌期の配当204円の予想も変更なし

つまり、赤字に転落した原因は本業ではなく訴訟の引当金で、会社はそれを理由に配当を減らしませんでした。

ただし、これは終わった話ではありません。会社は「最終的に課され得る負債の金額は確定していません」と書いており、評決後の申立てと控訴を行う方針です。金額が動く可能性は残っています。

配当は14年間180円、そこから4期連続で増配

武田薬品工業の1株配当の10年推移

この会社の配当は、長いあいだ動きませんでした。

2010年3月期から2023年3月期まで、14期連続で180円ちょうど。増えもしなければ減りもしない。私が投資を始めたころ、武田は「180円の会社」として知られていました。

それが2024年3月期から動き始めます。188円、196円、200円、そして今期予想が204円。4期連続の増配です。

決算短信には、こう書かれています。

方針内容
累進配当毎年の1株当たり年間配当金を増額または維持する
自己株式の取得適切な場合に取り組む
財務の前提調整後純有利子負債/調整後EBITDA倍率2倍を目指す

※2026年3月期決算短信「資本配分に関する基本方針」より。

累進配当を方針として掲げています。前の年より減らさないという約束です。赤字の年に増配したのは、この方針があったからだと考えると筋が通ります。

売上は10年で2.7倍。買収でそうなった

武田薬品工業の売上収益と営業利益率の10年推移

売上収益は1兆7,300億円から4兆6,400億円へ。10年で2.7倍になっています。

伸びた理由ははっきりしていて、2019年にアイルランドのシャイアーを買収したからです。2020年3月期に売上が2.1兆円から3.29兆円へ跳ねているのが、その年です。

ただ、営業利益率は安定しません。3.05%の年もあれば15.93%の年もある。買収でできた無形資産の償却が、年によって重くのしかかるからです。Core EPSという指標を会社が持ち出しているのも、ここが理由です。

武田薬品工業のROEの10年推移

ROEも低い水準です。10年でいちばん高かった2018年3月期でも9.36%、直近は1〜2%台。2026年3月期は赤字なのでマイナスです。

認めたくありませんが、資本効率は良くありません。9兆円の時価総額に対して、表面上はほとんど利益が出ていないように見えます。

EPSと配当性向

武田薬品工業のEPSと配当性向の10年推移

配当性向を並べると、この10年で100%を下回ったのは3回だけです。2020年3月期にいたっては633.6%。

これは異常値ではなく、この会社の常態です。表面の利益は償却で削られ、配当はCoreを見て決められている。だから配当性向という指標が、そもそも武田を測るのに向いていません。

直近の決算は、増収増益だった

2026年7月30日に、2027年3月期の第1四半期(4〜6月)が発表されています。

前年同期今回増減率
売上収益1兆1,067億円1兆2,199億円+10.2%
営業利益1,846億円2,014億円+9.1%
税引前利益1,506億円1,627億円+8.0%
当期利益1,242億円1,132億円△8.9%
※2027年3月期 第1四半期決算(2026年7月30日発表)より。当期利益は親会社の所有者に帰属する分。

売上と営業利益は伸びました。営業利益率は16.5%で、前年同期の16.7%とほぼ同じです。

減ったのは当期利益だけです。営業利益より下の段階で目減りしていますが、会社は通期の予想を変えていません。

進捗率で見ると、営業利益は通期予想4,200億円に対して47.9%、当期利益は1,660億円に対して68.2%です。第1四半期としては速いペースですが、前期も4〜6月がいちばん利益の出た四半期でした。この会社は期の前半に利益が寄ります。

中間配当は102円の予定です。年間204円のちょうど半分で、こちらも計画どおりに進んでいます。

株価と利回り

武田薬品工業の株価の10年推移

2018年に6,400円台をつけたあと、シャイアー買収への警戒で3,300円まで下げ、そこから長く3,500〜4,500円を往復していました。2025年の後半から上げて、今は5,847円です。

武田薬品工業の配当利回りの推移

利回りは3.44%から5.44%のあいだを動いてきました。過去10年の平均は4.26%。今の3.49%は、平均を下回っています。配当は増えていますが、株価がそれ以上に上がったからです。

予想PER(株価収益率)
55.65倍
Core EPSで見たPER12.4倍
類似企業PERアステラス13.3倍・第一三共19.0倍
減配実績なし(2010年以降)
PBR(株価純資産倍率)
1.22倍
過去のPBRレンジ0.82倍〜2.62倍
自己資本比率47.9%
還元方針累進配当
2026年9月15日終値・自己資本比率とPBRレンジは2026年3月末(通期)実績ベース。PERは赤字の年を含むためレンジは示していません

私が持っている理由

研究室で顕微鏡をのぞく研究員
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私の簿価利回りは5.53%です。株価が安かった時期に買えたので、今の3.49%よりだいぶ高い。

持ち続けている理由は2つあります。

ひとつは累進配当です。アイティフォーの記事でも書きましたが、配当で生活費をつくる計画にとっては、利回りの高さより「減らさない」という約束の方が大事です。武田はそれを方針に書いていて、赤字の年にも守りました。

もうひとつは薬という商売の性格です。景気が悪くなっても、患者は薬を飲むのをやめません。私のポートフォリオには景気に敏感な銘柄が多いので、その反対側に置く枠が要ります。

買い増すかというと、今は考えていません。ニチアスの記事でも同じことを書きましたが、利回りが過去10年の平均を下回っている株を、あえて買い増す理由がないからです。

まとめ

項目評価
現在の利回り(3.49%)△(過去10年平均4.26%を下回る)
私の簿価利回り(5.53%)◎
配当実績(10年で減配なし、4期連続増配)◎
還元方針(累進配当を明記)◎
収益力(ROE1〜2%台)△
事業の安定性(医薬品)○
訴訟リスク×(金額が未確定)

赤字の年に増配した会社です。それができたのは、会社がCoreという別の物差しを持っていて、そこでは利益がしっかり出ているからでした。

ただ、その物差しを信じられるかどうかは、読む人しだいだと思います。表面の数字ではROE1%台、PER55倍。説明を聞いて納得できる人だけが持てる株という意味では、少し癖のある銘柄です。

私は納得したので、持ち続けています。配当で月20万円という計画のなかでは、増える枠ではなく「減らない枠」に置いています。

⚠ 注意点
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年9月15日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
・直近の四半期決算は2026年7月30日に発表済みで、次回は10月下旬から11月上旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・AMITIZAに係る米国の反トラスト訴訟は終わっていません。会社は「最終的に課され得る負債の金額は確定していません」と明記しており、評決後申立ておよび控訴を行う方針です。4,025億円の引当金が増減する可能性があります。
・Core EPSは会社が独自に定義している指標です。無形資産の償却などを除いているため、一般的なEPSより高く出ます。そこから求めた配当性向は筆者の算出です。
・現在の利回り3.49%は、過去10年の平均4.26%を下回っています。この記事は「いま利回りが高い株」の紹介ではありません。
・2027年3月期のCore EPSは減少予想です。会社のマネジメントガイダンス(恒常為替レートベース)では、Core EPSは10%台半ばの減少、Core営業利益は5%から8%の減少とされています。
・表面のROEは1〜2%台で、資本効率は高くありません。PERも55倍と、利益に対して株価は割高な水準です。
・海外売上の比率が高く、為替の影響を受けます。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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