保有株の中で、いちばん静かに増えていったのがこの銘柄です。三井物産(証券コード:8031)。三菱商事と並ぶ五大商社のひとつで、資源から食料、医療、インフラまで手広く扱う総合商社です。
私の平均取得単価は1,317円。それが4,920円まで上がって約3.7倍、取得単価に対する利回り(簿価利回り)は約10.6%になりました。

買ったのはコロナ後、まだ商社が「地味で安い株」と言われていた頃です。そのあとバフェットが日本の商社株を買ったと報じられ、景色がすっかり変わりました。私の実力ではなく、完全に時期の運です。
基本データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 証券コード | 8031 |
| 企業名 | 三井物産株式会社 |
| 株価 | 4,920円 |
| 時価総額 | 約14.1兆円 |
| 配当利回り(予想) | 2.85%(140円) |
| PER(会社予想) | 15.2倍 |
| PBR(実績) | 1.59倍 |
| EPS(予想) | 324.61円 |
| BPS(実績) | 3,093.56円 |
| 自己資本比率 | 42.1% |
| 決算期 | 3月 |
| 私の平均取得単価 | 1,317円(簿価利回り約10.6%) |
株価は今年に入って6,675円の高値をつけたあと、7月に4,407円まで下げました。値動きの幅は相当に大きい銘柄です。
どんな会社か|「なんでも扱う」がいちばん近い

総合商社の説明はいつも難しいのですが、三井物産の場合は鉄鉱石と天然ガス(LNG)が稼ぎ頭と覚えておけば、だいたい間違いません。
そこに機械・インフラ、化学品、食料、流通、そして病院やヘルスケアまで並びます。資源で稼いだお金を、資源以外の事業に植え替えていくのが、いまの商社の姿です。
この構造はINPEXとの比較で分かりやすくなります。INPEXは原油とガスの一本足なので、価格が下がれば業績も配当も揺れます。三井物産は資源に強く依存しながらも、他の柱で振れを吸収できる。同じ資源関連でも、揺れ方がまるで違うわけです。
配当の推移|10年で4倍、しかも「下げない」約束つき

1株配当は2018年3月期の35円から、2027年3月期予想の140円へ。10年で4倍です。しかも10期のあいだ、一度も減配していません。
※2024年7月に1株が2株になる株式分割があったので、グラフの数字はすべて分割後の基準に直しています。分割前の実際の配当額はこの2倍です。
この会社の強みは、配当の「約束の仕方」にあります。三井物産は累進配当を掲げていて、これは「減配せず、維持または増配する」という方針のこと。さらに年間の下限配当額も公表しています。
つまり業績が落ちても配当は下げないと、会社側が先に宣言している。減配を経験したINPEXや、バルカーと比べると、この差は大きいところです。
業績の推移|資源価格で3倍に振れる利益

総合商社は売上高で語りません。取引の形態によって売上の見え方が大きく変わるので、実務では純利益で見るのが普通です。ここでも純利益とROEを並べました。
純利益は2021年3月期の3,355億円から、2023年3月期には1兆1,306億円へ。2年で3倍以上に膨らみました。資源価格の急騰があった時期です。そこから9,000億円前後に落ち着いて、2027年3月期予想は9,200億円。
見てのとおり、利益は資源価格でここまで振れます。それでも直近の水準は、コロナ前の2.5倍近く。資源以外の事業が育ってきた分だけ、底が上がっているようです。

ROEは10期すべてで合格ラインの8%を超えています。いちばん悪い2021年3月期でも7.34%と、ほぼ8%。景気敏感株でこの安定感は立派です。
EPSと配当性向|利益が減っても配当は増えた

この2本の線を見比べると、この会社の性格がよく分かります。
EPSは2023年3月期の360円台をピークに、2026年3月期は291円まで下がりました。ところが配当は同じ期間に70円→115円へ増えている。結果として配当性向は19%から39.5%へ上昇しました。利益が減っても配当を増やしたわけです。
会社の方針は総還元性向40%超(配当+自己株買い)。稼いだ利益の4割以上を株主に返す設計で、2027年3月期予想の配当性向は43%とちょうど方針どおりです。
言い換えると、この会社の配当は「利益の波」ではなく「方針」で決まっている。高配当株として持つ上で、これはかなり心強い性質です。
株価の動向|取得単価の3.7倍に

10年チャートを見ると、2016年から2020年までは1,000円前後で完全に眠っていました。私の取得単価1,317円(オレンジの点線)は、その眠っていた時期の水準です。
動き出したのは2021年から。バフェットの買いが報じられ、資源高が重なり、2026年には5,959円(月末終値)まで到達しました。5年で6倍近い上昇です。
ただし今年は、高値6,675円から4,407円まで3割以上の下落も経験しています。上がるときも下がるときも派手。ここは三菱HCキャピタルのような安定株とは正反対の性格です。
配当利回りの推移と、いまの割安度

各年末の利回りをたどると、株価が眠っていた2018〜2020年は4〜4.7%の高利回りでした。あの時期に買えた人が、簿価利回り10%超を手にしています。私の10.6%も、その時期の産物です。
現在の利回りは2.85%。過去9年の平均(3.71%)を下回り、高配当株と呼ぶには少し物足りない水準まで来ました。
PER15.2倍は、この会社の過去のレンジ(6〜15倍程度)の上限です。かつては「PER6倍の激安株」でしたから、そこは完全に見直されました。PBR1.59倍も、PBR1倍割れだった時代とは別物です。もう安い株ではありません。
財務は堅く、営業キャッシュフローは10期以上ずっと黒字で、直近は年間9,500億円規模。この稼ぐ力が、累進配当の裏づけになっています。
私がこの株を持ち続ける理由

理由① 簿価利回り10.6%は、もう作れない
取得単価1,317円に対して年140円。この1本だけで簿価利回り10.6%です。同じ利回りを今から作るには、株価が1,300円台まで戻る必要があります。売った瞬間に、二度と手に入らない数字です。
この考え方は三井住友フィナンシャルグループの記事とまったく同じです。安く買えた1株は、時間が経つほど価値が増していく。
理由② 累進配当という「約束」がある
高配当株を持っていていちばん怖いのは、減配です。累進配当を掲げている会社は、その恐怖がかなり小さくなる。業績が落ちる年も、配当だけは守られる可能性が高い。FIRE後に配当で生活する計画にとって、この性質は利回りの数字以上に価値があります。
理由③ 資源の波を、他の柱が吸収してくれる
資源価格が下がる年は必ず来ます。そのとき、資源一本の会社なら業績が沈みますが、この会社には機械・化学・食料・ヘルスケアという別の柱がある。1本足打法ではないという安心感です。
リスクと注意点
① 資源価格しだいで利益が半分になりうる。純利益が3,355億円から1兆1,306億円まで振れた実績があります。逆方向にも同じだけ動く可能性があります。
② 今から買う人の利回りは2.85%。過去平均を下回り、「高配当株」と呼べる水準ではありません。私の10.6%は、あくまで安く買えた過去の結果です。
③ 株価の変動が大きい。今年だけで高値から3割超下げています。値動きに動じない覚悟が必要です。
④ 為替と世界景気の影響を強く受ける。円安は業績にプラスに働きますが、逆回転もあります。世界の景気が冷えれば、扱う物量そのものが減ります。
私の考え|「売らない」が答え
取得単価の3.7倍。売れば大きな利益が出ます。それでも売りません。
理由はいつもと同じで、私が欲しいのは売却益ではなく毎月の配当だからです。配当で月20万円という設計図の途中で、簿価利回り10.6%の銘柄を手放す理由がない。むしろ何もしないことが、最善の運用になっている銘柄です。
買い増しについては「待ち」です。利回りが3.5%を回復する場面、株価で言えば4,000円割れが見えたら、迷わず拾いたい。私にできるのは相場を当てることではなく、安くなった日に動ける準備をしておくことだけです。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 私の簿価利回り(約10.6%) | ◎ |
| 現在の利回り(2.85%) | △(過去平均3.71%を下回る) |
| 配当実績(10年で4倍・減配なし・累進配当) | ◎ |
| 収益力(ROE10期連続8%超) | ◎ |
| 財務(自己資本比率42.1%・営業CF黒字継続) | ○ |
| 株価水準(PER15.2倍・PBR1.59倍) | △(もう安くはない) |
| ポートフォリオでの役割 | 資源+世界景気を取る、増配の主力 |
眠っていた5年と、跳ねた5年。同じ銘柄を持ち続けただけで、こんなに違う顔を見せてくれました。高配当投資でいちばん効いたのは分析でも売買でもなく、持ち続けた時間そのものだったようです。
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、すべて執筆時点のものです。株価は直近の終値、業績と配当は直近の本決算実績と会社予想に基づいています。
・1株配当とEPSは、2024年7月の株式分割(1株→2株)を調整した基準で表示しています。
・2026年8月4日に2027年3月期・第1四半期の決算発表が予定されており、その内容によって会社予想や各指標は変わります。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・累進配当は会社の方針であり、将来の配当を保証するものではありません。業績や方針の変更によって減配される可能性があります。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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