【高配当株】J-POWER(9513) なぜ手放さないのか

高配当銘柄

配当利回り、2.53%。

高配当株の記事なのに、この数字から始めます。

J-POWER(証券コード:9513)。正式な社名は電源開発といって、電力会社に電気を卸している会社です。

それでも私の簿価利回りは5.70%あります。株価が買値の2.3倍になったので、今の利回りは私の半分以下まで下がってしまった、というだけの話です。

利回りが低い株を、なぜ手放さないのか。書きます。

山あいの水力発電ダム
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基本データ

項目数値
証券コード9513
企業名電源開発株式会社(J-POWER)
業種電気・ガス業(電力の卸売)
株価4,158円
時価総額約7,332億円
配当利回り(予想)2.53%(105円)
PER(会社予想)9.0倍
PBR(実績)0.51倍
EPS(予想)460.21円
BPS(実績)8,136.92円
自己資本比率37.3%
有利子負債1兆6,769億円(2026年3月末)
決算期3月
私の平均取得単価1,843円(簿価利回り5.70%

稼ぎ頭は、国内の電力ではなかった

この会社の中身を見て、いちばん驚いたのがここです。

セグメント営業収益経常利益主な中身
発電事業8,404億円454億円国内の水力・火力発電。電力会社などに卸す
海外事業2,279億円949億円タイ・米国などの発電事業。持分法の利益が大きい
電力周辺関連事業496億円170億円豪州の炭鉱権益、エンジニアリングなど
送変電事業493億円17.8億円送電線・変電所の運営

※2026年3月期の実績。セグメント間の取引を消去する前の数字です。

営業収益の7割以上は国内の発電事業です。ところが経常利益でみると、いちばん稼いでいるのは海外事業。国内の発電事業454億円に対して、海外事業は949億円あります。

タイや米国での発電に出資していて、その持分法の利益が乗ってくる構造です。国内の電力卸だけの会社だと思って買うと、業績の動きが読めません。

そしてもうひとつ、電力周辺関連事業には豪州の炭鉱権益が入っています。石炭の値段と為替で、ここの利益は大きく振れます。2023年3月期には928億円を稼ぎ、2026年3月期は170億円まで落ちました。

配当は10年で1.5倍。地味だが、減らしたことはない

J-POWERの1株配当の推移

2017年3月期の70円から、2027年3月期予想の105円へ。10年で1.5倍です。

これまで紹介してきた銘柄と比べると、伸びは地味です。コマツ稲畑産業も、10年で3倍前後は増えています。

グラフを見ると、70円が長く続き、75円で6年、そこから90円・100円と段階的に上がってきました。今期105円で、5円の増配です。

ただ、2010年以降で一度も減らしていません。同じ電力セクターで、東京電力ホールディングスが今も無配であることを考えると、これは軽い話ではないと思っています。

2026年3月期に、205億円の自社株買いをした

配当の話より、こちらのほうが大きい動きでした。

項目内容
会社の還元方針総還元性向30%を目安に、安定的かつ継続的な還元充実に努める
2026年3月期の実績配当181億円+自社株買い205億円=386億円。総還元性向65.7%で、目安の2倍
自己株式の消却2026年5月に消却完了。発行済株式数は1億8,305万株から1億7,633万株へ
2027年3月期の配当予想中間50円・期末55円の年105円(前期比5円の増配)

2010年以降、この会社の自社株買いはほぼゼロでした。それが2026年3月期に、いきなり205億円です。

背景として、2026年の株主総会に向けて株主提案が出され、その後に撤回されたという経緯もありました。会社が資本の使い方を問われた年だった、ということだと思います。

夕暮れの送電鉄塔と送電線
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営業収益は電気料金しだいで大きく揺れる

J-POWERの営業収益と営業利益率の推移

2023年3月期だけ、営業収益が1兆8,419億円まで跳ね上がっています。燃料価格と電力市場の価格が高騰した年です。翌期には1兆2,579億円まで戻りました。

一方で営業利益率は、8〜12%のあいだをずっと行き来しています。売上が2倍近く動いても利益率は大きく変わらない。電気を仕入れて売る商売なので、値段が上がれば売上も費用も一緒に上がるからです。

J-POWERのROEの推移

ROEは今期予想5.66%。8%には遠く届いていません。

これは電力会社に共通する事情でもあります。発電所という巨大な資産を持ち、それを借金で賄っているので、資本に対する利益率はどうしても低くなります。

2021年3月期の2.76%は、コロナで電力需要が落ちた年です。2023年3月期の10.48%は、逆に電力価格が高騰した年でした。

EPSは動くのに、配当は動かない

J-POWERのEPSと配当性向の推移

EPSは122円から621円まで、5倍の幅で動いています。それでも配当は70円から105円へ、なだらかにしか動いていません。

その結果、配当性向は14.5%から61.6%まで振れます。利益に合わせず、配当だけを一定に保ってきた会社です。

2027年3月期予想の配当性向は22.8%。数字だけ見れば余裕があります。ただし会社の方針は「総還元性向30%を目安」なので、余った分は自社株買いに回る可能性のほうが高い。配当が急に増える設計にはなっていません。

直近の決算は、増収増益だが経常は半減

2026年7月31日に、2027年3月期の第1四半期(4〜6月)決算が発表されました。

売上高2,802億円(前年同期比12.0%増)、営業利益362億円(同11.7%増)。ここまでは順調です。

ところが経常利益は395億円で45.9%の減少、最終利益274億円で47.3%の減少になりました。

理由は決算短信にはっきり書かれています。前年の同じ時期に、米国の火力発電事業の持分を譲渡した利益が乗っていたからです。その反動で、今期は営業外収益が69.3%減りました。

一時的な利益が消えただけで、本業が悪くなったわけではありません。最終利益274億円は通期予想810億円に対して34%の進捗です。

株価は1,404円から4,158円になった

J-POWERの株価推移(直近10年)

この10年で、いちばん目を引くのは2020年です。

2020年11月末の株価は1,404円でした。コロナで電力需要が落ち、脱炭素の流れで石炭火力を持つ会社が売られた時期です。2017年に3,000円台だった株が、半分以下になりました。

そこから2022年まで1,500〜2,000円台が続き、2024年に2,500円前後まで戻し、2025年後半から一気に上がっています。2026年3月末には4,331円をつけました。

1,404円から4,158円。5年半で3.0倍です。

あのとき「石炭火力の会社はもう終わり」と言われていたのを覚えています。震災のときに狼狽売りした話を書いた身としては、売らずに済んだのは運が良かっただけかもしれません。

配当利回りの推移と、今の位置

J-POWERの配当利回りの推移(各期末時点)

ここが、この記事でいちばん都合の悪いところです。

現在の利回りは2.53%。過去10年の平均は3.44%なので、平均をはっきり下回っています

いちばん高かったのは2022年3月期末の4.29%でした。株価が1,748円まで下がっていた時期です。

配当が105円まで増えても、株価が4,000円まで上がってしまえば、利回りは2.6%にしかなりません。株価が上がるというのは、新しく買う人にとっては悪い知らせでもあります。

予想PER(株価収益率)
9.0倍
過去のPERレンジ2.7〜26.7倍
類似企業PER関西電力9.4倍・中部電力13.4倍
減配実績なし(2010年以降)
PBR(株価純資産倍率)
0.51倍
自己資本比率37.3%
ROE(27/3期予想)5.66%
還元方針総還元性向30%を目安
2026年9月9日終値・2026年6月末(第1四半期)実績ベース

PBRは0.51倍。純資産のほぼ半分の値段で取引されています。ただ、電力会社はどこも1倍を割っているので、この会社だけが特別に安いわけではありません。

私がこの株を持ち続ける理由

簿価利回り5.70%が、今の株価では作れないから

1,843円で買って、今期は105円を受け取ります。5.70%です。

今の株価4,158円で買うと2.53%。同じ利回りを作り直すには、株価が1,843円まで下がる必要があります。半分以下です。

ディフェンシブな枠が要るから

配当で生活する計画を立てていると、景気で大きく揺れる銘柄ばかりでは落ち着きません。

電力の卸売は、景気が悪くなっても需要が消える商売ではありません。配当を月20万円まで増やす計画のなかで、こういう枠は必要だと思っています。

株主還元の姿勢が変わってきたから

205億円の自社株買いは、この会社としては大きな変化でした。総還元性向65.7%は、方針の30%を大きく超えています。

これが一度きりで終わるのか、続くのかは分かりません。ただ、配当だけを見て「地味な電力株」と決めつけるのは早い、とは思うようになりました。

リスクと注意点

  • 利回りが低い。2.53%は過去10年の平均3.44%を下回ります。いま高配当を目当てに買う水準ではありません
  • 電力会社は無配になることがあります。東京電力ホールディングスは今も配当がありません
  • 大間原子力発電所は運転開始の時期が未定。2008年5月の着工から、審査が続いています
  • 有利子負債1兆6,769億円。時価総額の2倍以上あり、金利上昇は利払いを直撃します
  • 石炭火力への逆風。脱炭素の流れが強まれば、資産価値が見直される可能性があります
  • 海外事業と豪州炭鉱の比重が大きい。為替と石炭価格で利益が振れます
  • ROEが5%台。資本効率の高い会社ではありません

売らない。ただ、いま買い増す株ではない

簿価利回り5.70%を手放す理由はないので、売りません。

ただし、いま新しく買う株ではないと思っています。利回り2.53%で、ROEは5%台。株価は10年来の高値圏にあります。

この銘柄を買うタイミングは、おそらく次に電力株が嫌われたときです。2020年に1,400円まで売られたような局面。そのときに買えるかどうかが、簿価利回りを決めます。

高配当株投資というのは、結局これの繰り返しなのだと思います。

まとめ

項目評価
私の簿価利回り(5.70%)
現在の利回り(2.53%)×(過去10年平均3.44%を下回る)
配当実績(10年で1.5倍・減配なし)○(伸びは緩やか)
還元方針(総還元性向30%を目安)○(26/3期は自社株買いで65.7%)
収益力(営業利益率9%前後・ROE5.66%予想)
財務(自己資本比率37.3%・有利子負債1.7兆円)△(電力会社としては標準的)
株価水準(PER9.0倍・PBR0.51倍)○(ただし株価は10年来の高値圏)
ポートフォリオでの役割ディフェンシブ枠。買値が効いている

利回り2.53%の株を紹介する記事になりました。

それでも書いたのは、高配当株投資の成果が「今の利回り」ではなく「買値」で決まる、という当たり前のことがよく出ている銘柄だからです。

2020年に電力株を買った人と、2026年に買う人では、同じ会社の同じ配当を受け取っても、利回りが倍以上違います。会社は何も変わっていないのに、です。

次に電力株が嫌われる日を、静かに待とうと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

⚠ 注意点
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年9月9日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
・直近の四半期決算は2026年7月31日に発表済みで、次回は10月下旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
現在の配当利回り2.53%は、過去10年の平均3.44%を下回っています。この記事は「いま利回りが高い株」の紹介ではありません。
経常利益は今期21%の減益予想です。前期に海外の一時的な利益が乗っていた反動です。
電力会社は無配になることがあります。同業の東京電力ホールディングスは現在も配当がありません。J-POWERが2010年以降減配していないことは、将来を保証しません。
建設中の大間原子力発電所は、2008年5月の着工から運転開始の時期が「未定」のままです。審査が続いています。
有利子負債は1兆6,769億円(2026年3月末)で、時価総額の2倍以上あります。金利が上がると利払いが増えます。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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