先日、決算が出たばかりの銘柄です。
MS&ADインシュアランスグループホールディングス(証券コード:8725)。三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保を傘下に持つ、国内最大級の損害保険グループです。
その第1四半期の数字が、なかなかのものでした。親会社の所有者に帰属する四半期利益が3,286億円。通期の予想が4,250億円ですから、3か月で通期予想の77%を稼いでいます。
私の平均取得単価は2,915円、簿価利回りは5.83%。
この株はNISA口座で持っているので、配当に税金がかかりません。

基本データ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 証券コード | 8725 |
| 企業名 | MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 |
| 業種 | 保険業(損害保険・生命保険) |
| 株価 | 4,773円 |
| 時価総額 | 約7兆1,239億円 |
| 配当利回り(予想) | 3.56%(170円) |
| PER(会社予想) | 16.14倍 |
| PBR(実績) | 1.03倍 |
| EPS(予想) | 295.75円 |
| BPS(実績) | 4,628.49円 |
| 決算期 | 3月 |
| 私の平均取得単価 | 2,915円(簿価利回り5.83%) |
※株価・配当・EPSは、2024年4月1日の株式分割(1株→3株)に合わせた数字です。この記事のグラフもすべて分割調整後でそろえています。
自己資本比率をあえて載せていません。保険会社は預かった保険料を負債として抱える商売なので、この数字が製造業などと同じ意味を持たないからです。健全性はソルベンシー・マージン比率という別の指標で見ます。ちなみにIFRSベースの親会社所有者帰属持分比率は22.1%で、会社が四半期ごとに開示しています。
どんな会社か|いちばん大きいのは、実は海外
MS&ADと言われてもピンと来ないかもしれません。
三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保。この2つの名前なら、車の保険や火災保険で見たことがあるはずです。その持ち株会社がMS&ADで、ほかに三井ダイレクト損保と生命保険2社を抱えています。

| セグメント | 売上比率 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 海外事業 | 41% | 海外の子会社・関連会社 |
| 国内損保(三井住友海上) | 29% | 自動車・火災など |
| 国内損保(あいおいニッセイ同和) | 22% | 自動車・火災など |
| 国内生保(2社) | 5% | 三井住友海上あいおい生命・同プライマリー生命 |
| 国内損保(三井ダイレクト) | 1% | 通販型の自動車保険 |
※2027年3月期第1四半期の保険収益。四捨五入のため合計は100%になりません。
これは私も意外でした。
いちばん大きいのが海外事業で、41%。国内の損保2社を足しても51%ですから、収益の半分近くはもう日本の外から来ています。「日本の損保会社」というイメージで見ていると、実態を見誤ることになりますね。
ただし、利益で見ると景色が変わります。
第1四半期の四半期利益は、三井住友海上が1,875億円で最大。海外事業は964億円、あいおいニッセイ同和が877億円と続きます。稼ぎの柱はやはり国内の損保で、海外は規模のわりに利益率が低い、という読み方になります。
配当の推移|10年で4.25倍、減配なし

40円から170円へ。10年で4.25倍、しかも一度も減っていません。
特に直近の伸びが急です。2024年3月期の90円から、145円、160円、そして今期予想が170円。3年で倍近くになりました。
ただ、ここには注意点があります。グラフの黄色い部分が特別配当で、2025年3月期から乗るようになりました。決算短信の注記に、内訳がはっきり書いてあります。
| 期 | 合計 | うち普通配当 | うち特別配当 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期(実績) | 160円 | 125円 | 35円 |
| 2027年3月期(予想) | 170円 | 140円 | 30円 |
普通配当だけで見ると125円→140円で、伸び率は12%。
合計では160円→170円の6.3%増ですから、普通配当のほうが速く伸びて、特別配当が減っているという形です。中身としてはむしろ良い動きだと思います。ただ、特別配当の30円は約束されたものではありません。
私の簿価利回り5.83%も、この30円を含んだ数字です。普通配当140円だけで計算すると4.80%になります。それでも十分な水準ですが、5.83%をそのまま将来の前提にするのは危ないですね。
株主還元方針|利益の半分を、配当と自社株買いで返す
会社の方針は、はっきりしています。
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| 総還元性向 50%(基本的還元) | グループ修正利益の50%を、配当と自己株式の取得で還元する |
| 追加的還元 | 事業環境・ESRの水準・流動性・株価動向を踏まえ、機動的・弾力的に上乗せする |
| 自社株買い 2,650億円(2025年度) | 年間配当160円に加えて決定。上限ベース |
「グループ修正利益の50%」という言い方が、この会社の特徴です。
保険会社の純利益は、株式の売却益や災害の発生でぶれます。そこで一時的な要因を調整した独自の利益をものさしにして、その半分を返す。三井物産の累進配当のように「金額を下げない」約束ではなく、利益に対する割合を約束するタイプですね。
そして自社株買いが効いています。2025年度は2,650億円の枠を決定。実際に株数が減っていて、第1四半期の期中平均株式数は14億4,861万株と、前年同期の15億1,154万株から4.2%減りました。1年で株数の4%が消えている計算です。
株数が減れば、同じ配当総額でも1株あたりは増えます。増配の何割かは、この自社株買いが作っているとみていいと思います。
業績の推移|10年で赤字なし、ただし波は大きい

ここでも売上高のグラフは作っていません。
保険会社は「売上」に当たるものが分かりにくいうえ、MS&ADは会計基準をIFRSに切り替えています。過去10年を同じものさしで並べられないので、伊藤忠の記事と同じく純利益で見ることにしました。
純利益は1,430億円から5,106億円まで動いています。3.5倍の開きです。2020年3月期と2021年3月期が谷で、ここは自然災害の保険金支払いとコロナが重なった時期でした。逆に2026年3月期の5,106億円は過去最高。10年間、赤字の年はありませんが、上下の振れはかなりのものです。さらに遡ると、タイの洪水と東日本大震災が重なった2012年3月期には赤字を出しています。

ROEは4.24%から8.06%のあいだ。合格ラインとされる8%を超えたのは、11年で1回だけです。数字だけ見れば見劣りしますが、保険会社は株式などを大量に抱えていて純資産が膨らみやすいので、ROEは低く出やすい構造にあります。第一ライフグループの記事でも同じ話を書きました。
それでも、低いことに変わりはありません。
EPSと配当性向|50%前後を行ったり来たり

配当性向の線が、きれいにギザギザしています。34.2%、50.0%、42.6%、60.4%…と、毎年のように跳ねている。2025年3月期は75.0%まで上がり、翌期は46.6%まで下がりました。
これは配当が不安定なのではなく、利益のほうが動いているからです。
配当は毎年きちんと増えているのに、分母のEPSが上下する。だから割合だけがぶれる。利益が落ちた年に配当性向が跳ね上がるのは、むしろ配当を守った証拠だと読めます。
今期の予想は57.5%です。
株価の動向|2024年から、別の株になった

このグラフは、はっきり2つに分かれています。2016年から2023年までの7年間、株価はほぼ1,000円台で横ばい。ところが2024年に入って急に上がり始め、今は4,773円です。
7年動かなかった株が、2年半で2.6倍になりました。
私の取得単価2,915円から見ると、今は6割ほど上にいます。簿価利回り5.83%は、ここから来ています。
年初来では安値3,698円から高値5,146円まで、4割近い幅で動いています。
配当利回りの推移と、今の位置

現在の利回りは3.56%です。
過去9年の平均が3.86%なので、平均をやや下回っています。ただ、これまで見てきた銘柄ほど極端ではありません。株価が2.6倍になったのに利回りが3%台を保っているのは、配当が株価に追いつくスピードで増えてきたからです。
いちばん低かったのは2024年の2.61%。株価が急騰した年ですね。そこから配当が追いついて、今は3.56%まで戻しています。高配当株のスクリーニングにも、まだぎりぎり引っかかる水準だと思います。
直近の決算|3か月で通期予想の77%
2026年8月14日に、2027年3月期の第1四半期決算が発表されました。
保険収益1兆6,861億円(前年同期比14.1%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益3,286億円(同33.4%増)。大幅な増収増益です。
問題は、通期予想との差でした。
会社の通期予想は4,250億円で、前期の5,106億円から16.8%の減益という見通しです。ところが第1四半期だけで3,286億円を稼いでしまった。進捗率は77.3%になります。
残り9か月で約960億円稼げば予想に届く計算です。
もっとも、これを素直に喜んでいいのかは分かりません。保険会社の四半期利益は株式の売却益や災害の有無で大きく振れますし、台風シーズンはこれからです。会社が通期予想を据え置いているのも、そのあたりを警戒しているからでしょう。
次の四半期を見るまでは、判断を保留しておこうと思っています。
私がこの株を持ち続ける理由
簿価利回りが5.8%あるから
2,915円で買って、今170円を受け取っています。
特別配当を除いた普通配当だけでも4.80%です。配当で月20万円という目標から見て、この水準を手放す理由がありません。
10年間、赤字がないから
利益の振れは大きいのですが、マイナスにはなっていません。
災害が多い年でも、コロナの年でも、1,400億円台は確保しています。保険というのは事故が起きなければ儲かる商売なので、悪い年があっても翌年に戻りやすい。景気敏感というより、天候に敏感な株だと思っています。
自社株買いで株数が減り続けているから
1年で株数が4.2%減りました。
これが続くかぎり、会社が配当総額を増やさなくても1株あたりの配当は増えていきます。総還元性向50%という方針は、配当と自社株買いのどちらでもいいという意味ですが、今は自社株買いのほうに厚く配分されているように見えます。
リスクと注意点

気になるところを4つ書いておきます。
1つめは、特別配当への依存です。
今期の170円のうち30円が特別配当。これがなくなれば140円になり、今の株価での利回りは2.93%まで下がります。会社は総還元性向50%を約束していますが、金額の下限は約束していません。
2つめは、自然災害です。
損害保険の利益は、大きな台風や地震があれば一気に削れます。過去のグラフで2020年3月期と2021年3月期が凹んでいるのが、まさにそれでした。これは経営努力でどうにかなる話ではありません。
3つめは、PBR1.03倍という水準です。
この会社の過去のPBRレンジは0.26倍から1.11倍。今は16年間のレンジ上側にいます。長らく1倍を割っていた株が、ようやく1倍を超えたところとも言えますが、割安と呼べる位置ではありません。
4つめは、ROEの低さです。
11年で8%を超えたのが1回だけ。保険会社の構造上そうなりやすいとはいえ、資本を効率よく使えているとは言いにくい数字です。裏を返せば、政策保有株の削減などで純資産を圧縮できれば改善の余地がある、という見方もできます。
私の考え|売らない。買い増しは4,250円から
売りません。
簿価利回り5.83%を手放す理由が見つかりません。普通配当だけで計算しても4.80%あります。
買い増しについては、いつもと少し事情が違います。
私が高配当株に求める利回りは4%です。配当170円で逆算すると株価4,250円あたりで、今の4,773円から11%ほどの下落で届きます。これまでの銘柄に比べると、ずっと現実的な距離ですね。年初来安値が3,698円ですから、今年のうちに一度は通っている水準でもあります。
ただし、その4%は特別配当込みの計算です。
普通配当140円で4%を求めるなら株価3,500円。ここまで下がるのは、さすがに何かが起きたときでしょう。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 私の簿価利回り(5.83%/普通配当のみでも4.80%) | ◎ |
| 現在の利回り(3.56%) | ○(過去9年平均3.86%を少し下回る程度) |
| 配当実績(10年で4.25倍・減配なし) | ◎ |
| 配当の中身(170円のうち30円が特別配当) | △(下限の約束はない) |
| 還元方針(総還元性向50%・自社株買いで株数4.2%減) | ◎ |
| 収益力(10年赤字なし・純利益は1,430〜5,106億円) | ○(振れは大きい) |
| 資本効率(ROEは11年で8%超えが1回) | × |
| 株価水準(PER16.14倍・PBR1.03倍) | ×(PBRは16年のレンジ上側) |
| ポートフォリオでの役割 | 天候に敏感な、守りの1本 |
この記事を書きながら、ひとつ気づいたことがあります。
損害保険というのは、他人の「もしも」を引き受けてお金をもらう商売です。事故や災害が起きなければ利益になり、起きれば減る。
その株を持って配当を受け取っている自分は、何をしているのか。
台風が来なかった年に増える配当を、FIREの原資にしている。そう書くと落ち着かない気分にもなりますが、保険というのはお金を集めて備える仕組みそのものです。私が配当を受け取れているということは、誰かの備えがちゃんと回っているということでもあります。
そう考えることにしています。
・本記事の株価・指標・業績・配当の数字は、2026年8月20日時点のものです。株価は同日の終値、業績と配当は直近の決算実績と会社予想に基づいています。
・株価・配当・EPSは2024年4月1日の株式分割(1株→3株)に合わせて調整した数字です。分割前の資料と比べる際はご注意ください。
・直近の四半期決算は2026年8月14日に発表済みで、次回は11月上旬の予定です。最新の数字は必ずご自身でご確認ください。
・2027年3月期の予想配当170円には、特別配当30円が含まれています(中間・期末それぞれ普通配当70円+特別配当15円)。特別配当は業績等により変動し、継続が約束されたものではありません。
・総還元性向50%は会社の方針であり、将来の配当を保証するものではありません。自己株式の取得額(2025年度2,650億円)は上限であり、実際の取得額が上限に達しない場合があります。
・損害保険事業の利益は、自然災害の発生状況や金融市場の動向によって大きく変動します。
・保険会社は事業構造上、自己資本比率が製造業などと同じ意味を持ちません。健全性はソルベンシー・マージン比率等で確認してください。
・本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。私自身の保有銘柄について、投資判断の記録として書いたものです。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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